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顧客からフライパンを提供してもらう

[要旨]

味の素冷凍食品では、公式Twitterで、「冷凍餃子がフライパンに張り付いてしまう」という投稿をした顧客に対し、「使い込んだフライパンでも綺麗に焼けるギョーザの検証に向けたお願い」として、「フライパンを提供いただき、研究・開発に活用したい」と返答したところ、1,000個を超えるフライパンが集まりました。このような、カスタマーオリエンテッドに基づく取り組みは、顧客体験価値を高めるためのよい事例と言えます。

[本文]

前回は、「顧客第一主義」を誤解して、顧客の言いなりになってしまう人が少なからずいますが、本当の顧客第一主義は、顧客を出発点として、自社の活動方針を決めること、すなわち、カスタマーオリエンテッド(顧客志向主義)であるということを説明しました。そして、最近、このカスタマーオリエンテッドのよい事例と思われる会社の対応がありましたので、ここでご紹介したいと思います。その事例は、ITmedia社が紹介していた、味の素冷凍食品の顧客対応です。

ITmedia社の記事によれば、「味の素冷凍食品・公式Twitterは、先日、『冷凍餃子がフライパンに張り付いてしまう』という投稿に対し、『使い込んだフライパンでも綺麗に焼けるギョーザの検証に向けたお願い』として、『フライパンを提供いただき、研究・開発に活用したい』と返答」したそうです。その結果、味の素冷凍食品には、1,000個以上のフライパンが届いたそうです。

このような、フライパンを送ってもうらうという対応が、成功事例であるかどうかということは、直接的に明確にすることはできません。でも、顧客が自社製品の餃子を、うまく焼くことができるようにしようと、同社が真剣に考えているという姿勢は、十分伝わったことは確かだと思います。フライパンを提供した顧客は、餃子詰め合わせのお礼がもらえるというインセンティブがあったとはいえ、1,000人以上の顧客がフライパンを提供するという手間を惜しまなかったことは、その現れだと思います。

また、同社が1,000個以上のフライパンが送られてきたら、それなりの労力やコストを必要とするでしょう。それでもこういった対応をするのは、同社は、餃子という食品を提供するのではなく、手間をかけないで失敗しない餃子を食べてもらおうというカスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験価値)を提供しようとしているからだと思います。すなわち、冷凍餃子という有形の商品そのものだけでなく、それを購入し食べることによって得られるCXの方が重要性を増していると考えているのでしょう。だからこそ、現在は、真の意味でのカスタマーオリエンテッドが増々重要になっていると、私は考えています。

2023/8/2 No.2422

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