従業員面談でモチベーションを高める
[要旨]
島田慎二さんは、千葉ジェッツの社長時代、従業員の方と時間をかけて面談を行い、両者の合意のもと、目標を設定していました。これは、単に目標を設定するだけでなく、従業員の方のモチベーションを高め、また、当事者意識を持ってもらうことで、事業の競争力を高めることを目的とするものです。
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今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、一般的な会社では、上司が部下に対して、直接的な解決方法を教えるティーチングが行われることが多いが、そのような指導法では、部下はきちんと学ぶことができず、同じ間違いを起こす可能性が高くなるため、問いかけにより情報を引き出し、本人に考えさせて気づきや納得を与えるコーチングを行うことの方が、部下を成長させるために望ましいということを説明しました。これに続いて、島田さんは、部下との面談の重要性について述べておられます。
「千葉ジェッツでは、私と本人が話をして個人目標を一緒に決めています。例えば、すべて仮の数字ですが、話はこのような感じで進みます。『会社の売上目標が10億円で、それを4つの部門それぞれの目標として、3億円、2億円、3億円、2億円と考えています。となると、Aさん、あなたの部門の目標は3億円だから、Bさん、Cさんと3人でこの目標を目指すことになるわけだけど、キャリアの違いや実績を考えると、あなたの個人目標は1.4億円と考えています』と、まずは、会社から部門、部門から個人へと数字を落とし、個人目標を仮置きしたところから始めます。(中略)
すると、今度は本人から、私が仮置きした目標について、『自分としてはもう少しいけそうだ』とか、『それはちょっときついから下げたい』などの意見が出てきます。(中略)そうやって協議しながら、個人の目標額を絞っていきつつ、今度は、『じゃあ、この目標を達成したら、90万円のボーナスということにしよう』と提示します。こうして目標数字を決めたあと、今度はコンピテンシー、つまり行動目標を決めていきます。
そうして、それぞれの定量目標、定性目標が決まったら、目標契約成立。(中略)何にフォーカスしてほしいか、何をやらなきゃいけないかということを話し合いのもとで決め、合意したものを、定期的な面談で進捗を確認していく。そして、本人の心が折れそうになったときに支えるし、うまくいったときは褒めます。うまくかなかったら、どうしたらうまくいくか一緒に考えます。これが、面談です」
島田さんが行っていたこの方法は、ほぼ、ジョブディスクリプション(職務記述書)だと思います。これは、個人の目標が明確になり、また、モチベーションが高くなるという効果があります。ただ、島田さんがこの方法にこだわっている理由は、かつて、島田さんが失敗した経験によるもののようです。というのは、島田さんご自身がが起業した旅行会社の社長時代、従業員の方たちとのコミュニケーション不足で、ストライキを起こされた経験があるからのようです。
結局、事業活動は、従業員の方たちの献身的な協力がなければ遂行できないということを、島田さんは身に染みて経験したわけです。だからこそ、島田さんは、従業員の方たちとの目標設定に労力と時間を惜しまないのでしょう。むしろ、面談に時間をかけ、従業員の方のモチベーションを高めることの方が、事業の競争力を高めることになると考えておられるのでしょう。
2023/7/28 No.2417