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1つ1つ階段を昇るような目標設定

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、経営者は、成長したいと望む部下に対しては、少し高めの目標を常に設定することが望ましいということです。なぜなら、高すぎる目標を与えると、実質的には目標を未達成することを認めることになるからだそうです。しかし、1つ1つ階段をあがっていくような目標設定をすることで、着実に部下は能力を高めていくことができるようになるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、会社がブラック会社と評価されることのないよう、職場環境の改善が進んだものの、それは、同時に、「自分に負荷がなく、このままだと将来、社会で通用しなくなりそうで怖い」といった「成長できないことへの不安」を感じる従業員も現れていることから、会社が求める人材はどのようなものかを明確にするなどの対応が重要ということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、経営者の方は部下の方に対して、1つ1つ階段をあがっていくような目標設定をするべきだということについて述べておられます。「ここまで、『危機感』について、正しい認識をしでもらうために説明をしてきました。すると、『絶対に危機感は持ちたくない』、『成長なんでしたくない』と思う人もいることでしょう。(中略)もちろん個人の働き方の問題なので、『転勤がない一般職コースを選ぶ』、『パートやアルバイトを選ぶ』という道だってあります。

その代わり、総合職での社員に比ベて待遇が良くないことや、責任の大きな仕事は任されることがないのは、ご承知の通りでしょう。世の中には『トレードオフ(両立できない関係性)』があるのです。『高い給料を得たいし、社会人として成長したい、けれど、責任はとりたくないし、希望しない会社の命令は理不尽だ』、そんな都合のいいことはありません。何かを選べば、何かを失う。

その『仕組み』からは逃れられないのです。人の上に立つ人は、相手に『絶妙な危機感』を与え続けることができます。そのコツは、『少し高めの目標をつねに設定する』ということです。これも、ちゃんと説明をしないと誤解する人がいます。『とにかく高い目標を立てればいい』と思い込んでしまうのです。『来年は個人の売上を10倍にしてください』、『言われたことの100倍の努力をしてください』、そうやって、絶対に達成できない目標を設定してしまう。

また、プレーヤー自身が自分で自分に無理な目標を設定する場合もあります。『来年は売上を10倍にしてみせます!』と、やる気をアビールしてみせるような人が、社内にいないでしょうか。これは、勢いだけを見せて、その場をしのぐだけの行為です。この部下の発言を間いて、『よし、いいぞ、頑張れ!』と認めてしまう上司もいます。マネジメントにおいて、絶対にNGです。

なぜなら、その応援は『未達の承認』になってしまうからです。目標を立てた段階から、いきなり『達成しなくでもOKです』と認めでしまっているのです。たとえば、一人前のプレーヤーとして、最終的には、『売上1億円』という高い目標をクリアすることを目指してほしいとしましょう。そのためには、毎週、毎月、毎年、1つ1つ階段をあがっていくような目標設定をすベきです。どんなに運動神経が優れている人も、急すぎる坂は絶対に上がれません。

しかし、階段をあがるように、徐々に目的地を目指していけば、気づいたときには頂上に辿りり着いています。これが真理です。仕事に限らず、どんなものでも同じことが言えます。そのためには、一歩一歩、階段をあがるときの絶妙な『負荷』を与え続けることです。そのための『いい緊張感』です。『少し頑張ればいける、あともう一踏ん張りでできる』、これをキャリア形成として長く続けていくことです。そうやって、個人の目標を達成していけば、次は人の上に立つ番がくるのです」(146ページ)

安藤さんの、成長しようとしている従業員に対して、経営者は、「毎週、毎月、毎年、1つ1つ階段をあがっていくような目標設定をすベき」と述べておられます。これについては、ほとんどの方がご理解されると思います。ところが、これを実践することは、決して不可能ではないものの、特に中小企業においては、現実にはあまり容易ではないと、私は考えています。なぜなら、中小企業では、会社の事業計画が作成されていることが少ないことが現実です。

本来なら、まず、会社の中長期計画を策定し、次に、それに基づいて年間計画を策定し、さらに、それを細分化して会社の各部署の目標や、それを細分化した個人目標を設定することが望ましいと言えます。しかし、会社の事業計画も存在しない会社では、あまり根拠のない目標を、会社内の部署や個人に与え、結果として目標が未達成となったり、従業員も能力を伸ばすことができなかったりするのだと思います。

2025/1/3 No.2942

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