部下の評価の目的は部下の成長
[要旨]
岩田松雄さんが日産に勤務していたとき、上司が自分に対する評価のフィードバックをしてくれなかったことがあり、そのときはとても落胆したそうです。しかし、部下を成長させるためには、上司と部下でしっかりと話し合いを行い、フィードバックをすることが、部下を成長させる糧になるということです。すなわち、部下の評価の目的は、部下を成長させることということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、岩田さんが、ザ・ボディショップの社長時代、部下育成が上手な店長をMVPに選んだが、そうすることで、社長が望む人材はどのような人材なのかを、会社内に伝えることができるようになるということについて説明しました。これに続いて、岩田さんは、部下の評価方法の大切さについて述べておられます。
「きちんと評価者を評価することをしないと、好き嫌いで評価が行われ、ゴマすりが始まったりして、派閥ができやすくなります。(中略)日産自動車時代、部長に疎まれた私は、一所懸命に遅くまで働き、それなりの実績を上げているにもかかわらず、最低の評価点をつけられたことがあったのです。長期の病欠や不正でもしない限り、つかないような評価だったのです。しかも、評価を受けた時点では、一切、そういったことは知らされず、それを知ったのは数年後で、とてもショックを受けました。
その後、きちんと評価してくれる上司に巡り合い、皆に追いつくことができました。大切なことは、上司と部下で、評価についての話し合いが、しっかり行われることです。期首に目標をお互いに確認して、期末に部下は自己評価を上司に伝え、上司は部下への評価のフィードバックをする。この話し合いこそが一番大切で、評価などは、極端な場合、○△×程度でもいいのかもしれません。評価の目的は、フィードバックをして、本人の成長につなげることです」(179ページ)
岩田さんのように、期首と期末に、上司と部下が面談を行うということは、人材育成のためにとても大切です。そして、今回も、前回と同様のことを述べることになりますが、上司と部下の面談は、時間と労力がかかるために、特に中小企業では実施されていないことが多いようです。その一方で、中小企業の経営者の方は、部下に対して、自律的、能動的に活動して欲しいと望んでいる方も多いと思います。
さらには、その前の段階として、定着率を高めたいと考えていることも多いと思います。でも、それについては、上司と部下の面談は効果があると、私は考えています。中小企業の場合、岩田さんの行ったような目標設定とその確認をしなくても、単に、3か月毎、または、6か月毎に、社長と従業員が面談するだけでもよいと思います。ただし、その際は、社長は聴き手に専念することに注意が必要です。たとえ、従業員と社長の考えが違っていたり、従業員が誤解をしていても、いったんは受け止めることが鍵です。
そういったことをするだけでも、従業員のモチベーションやモラールは向上します。そして、給与を上げるなどの、金銭的コストはかからない手法です。むしろ、定着率が上がれば、採用コストを減少させることができます。ただ、中小企業の場合、多くの社長は、自分自身がプレーヤーとして動きたい(または、動かざるを得ない)ので、前述したように、部下との面談を実施しない場合が多いのではないかと、私は考えています。
2023/6/8 No.2367
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