不満の原因は評価基準が明確でないから
[要旨]
NISSYOでは、従業員向けに給料体系勉強会を実施しており、さらに、従業員に勉強会への参加を義務付けているそうです。そして、この勉強会を通して、同社が機会平等であることや、努力が報われる会社であることを伝え、従業員の士気を高めているそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、NISSYOの社長、久保寛一さんのご著書、「ありえない! 町工場-20年で売上10倍! 見学希望者殺到!」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、久保さんは、会社の実力は、社員の学歴ではなく、入社後の社員教育の量で決まると考えていおり、そこで、同社では、従業員1人当たりの教育費を、平均的な会社の約13倍の50万円をかけ、特に価値観の共有に、その7割を充てているということを説明しました。
これに続いて、久保さんは、従業員に対して、給与体系勉強会を実施しているということについて述べておられます。「社員にとって、『自分の給料』は最大の関心事です。それなのに、、多くの社員は、『どうすれば、自分の給料が上がるのか』を分かっていません。そこで、NISSYOでは、給料体系を勉強する『給料体系勉強会』を開催し、出席を義務付けています。
給料体系勉強会では、経営計画書に明記された、『社員に関する方針』、『人事評価に関する方針』を参照しながら、『10年後の自分の給料』を計算してもらいます。自分の基本給をベースに(中略)10年後の給料の違いを計算します。10年間、『オールA評価』の社員と、10年間『オールC』の社員では、給料に150%(1.5倍)の差が出ます。この差を知ると、多くの社員が、『頑張れば、給料が増える、頑張らなければ、給料が減る』ことを理解します。
社員が給料に文句を言うのは、『評価基準』が明確でないからです。当社は、『評価基準』を明確に定め、社員に公開しています。当社の人事評価制度は、『頑張った社員と、頑張らなかった社員の給料・賞与に差をつける』、『チャンスは平等に与え、学歴、性別、年齢、国籍による差別をしない』制度です。頑張っても、頑張らなくても評価が同じだとしたら、頑張らない社員がまともです。ですから、差をつける。年齢や職責に関わらず、頑張れば頑張っただけ収入も増えるしくみです」
どうすれば収入が増えるかを従業員に教えるということは、「馬の鼻先に人参をぶら下げる」ような行為に思えるかもしれません。しかし、「社員が給料に文句を言うのは、『評価基準』が明確でないから」と述べておられるように、評価基準が不明確、または、評価基準がない会社では、従業員の方の士気は高まりません。そして、中小企業では、評価基準が不明確であったり、賃金規定が定められていなかったりして、従業員がどのように昇給するのかが不明確である場合があります。
そうであれば、従業員の士気は高まらなくないばかりか、そのような状態にある会社では、経営者が従業員に関心がないと、従業員に思われてしまいます。したがって、久保さんのように、まず、評価基準を明確にし、さらに、それを従業員に理解させることは、従業員の士気を高めることになり、それは、業績の向上につながると、私は考えています。また、客観的な評価基準を作ることは、これも久保さんが述べておられるように、自分が勤務している会社は、機会平等であること、自分の努力は報われることを理解することになり、愛社精神を涵養することにもなると思います。
2024/2/22 No.2626