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詩のようなもの・詩または物語

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下書き再生工場参加します♡「へそのラムネ♡」

下書き再生工場参加します♡「へそのラムネ♡」

「今日はもう誰も来ないな。」

男は1人でやってる喫茶店の閉店準備をはじめることにした。

カランカラン♪

入り口のドアにぶら下げてあるドアチャイムの音がする。

振り向くと、そこに女が立っていた。
美しいが、どことなく憂いを帯びている。

「あの、もう閉店ですか?」

やれやれ。
閉店準備の手をとめて男はいった。
こんなことはときどきあることだ。

「大丈夫ですよ。飲みのもくらいはまだ出せます

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なにもかもみちたりると

なにもかもみちたりると

せかいじゅうが
なにもかもみちたりると
そこにはなにもない

なみだもないが
かんしゃもない

せかいのことを
なにもかもしってしまうと
なにもかんじない

しらないくやしさも
しるよろこびも

そういういみでは
いまもけっこういいぐあいなんじゃないかなとおもうことがある

もんくなしにかいてきって
わけじゃないんだけども

貝

貝を砂抜きするには
よく洗ったあと
海の水と同じ濃さの塩水にいれて
蓋をしてほっておいてあげる

無理矢理こじ開けては
いけません

水に入れて火にかけて
ぐらぐら煮立てると
パックリ殻が開きますが
貝はしにます

貝のスープは美味しいですが
それは貝の生きてきた物語が
溶けだしているからです

貝は海の水につけて
じっとみたりせずに
放っておくと
自然におしゃべりします

トンネルの外で呼ぶものはまた別のトンネルの中にいる

トンネルの外で呼ぶものはまた別のトンネルの中にいる

わたしのためのメモ
わからなくてもいい

トンネルの外で呼ぶものは
また別のトンネルの中にいる

トンネルに入っていないものは
いないのではないか

トンネルの中に
またいくつものトンネルがあって
またその中にあるトンネルにいる場合もある

同時にいくつものトンネルの中にいることも可能だ

トンネルの中に長くいると
トンネルの外に出るのがおそろしい

トンネルの外はまるであべこべの世界だからだ。

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わたしはワカメ😉

わたしはワカメ😉

わたしはワカメ
ゆらゆらワカメ

いつも水中でゆれる
いきかうものを眺めてる

わたしはワカメ
たぶん移動してない

わたしからでる気泡が
上の方にいくのをみることもある

途中でなくなったり
なくならなかったり

うまくいけば銀色の天井まで届く
そこから先はわからない

わたしはワカメ
わけワカメ♡

おやおやここはどこだろう
乾燥わかめになっちゃった

おやおやここはどこだろう
お味噌汁ってい

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会社に行きたい   読み物です

会社に行きたい   読み物です

朝目覚める。
デジタル時計が31時をつげている。

またか。

窓の外をみるとまだ間に合いそうだ。

パジャマを洗濯機に放り込み、スマホで、ニュースをチェックしながら簡単な朝食をすます。

とりたてておかしなことは書いてない。

これならなんとかなりそうだ。
さてと、出勤までに洗濯干すか。

ピーピーピーピーピーピーピー
ピーヨーピーヨピーヨピーヨ

うわ何この洗濯機の音!
やっぱどっかおかしいじ

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陽が当たらなくなった枝を
樹はいずれ落とします

それだからといってその枝は
はじめから要らなかったかというと
それは違います

その枝がなくても樹は生きていける
ようになったのです

砂山を作ったことがありますか?

砂山を作ったことがありますか?

砂山を作ったことがありますか?

たいていの人はあるとおもいます。

砂場で1番といっていいくらいシンプルな遊びですから。

大きな砂山をみんなでつくります。

どんどん砂が集まって、どんどん山が高くなり、みんなの気持ちも浮き立ちます。

山の頂上が見えてくるあたりになると…

必ず誰かがもっと大きいの作ろうや!

と言い出して、

みんなで砂山を踏みつぶすことになります。

あれあれ大変。

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雨にまつわる記憶

雨にまつわる記憶

雨に濡れずに歩くには
宙を浮いて歩こうとすれば良い

どこで耳にしたのか覚えはない

雨に濡れずに歩くには
宙に浮いて歩こうとすれば良い

たぶんこれは本当のことだ

雨に濡れずに歩くには
雨に濡れるか濡れないか
考えないほうが良い

雨に濡れずに歩くには
雨に濡れずに歩くことを一度忘れて
宙を歩こうとすれば良いのだろう

宙に浮いて歩こうとして
宙を浮いて歩くことを一度忘れて
雨に濡れずに歩こう

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衛兵とバレリーナ

衛兵とバレリーナ

衛兵は今日も突っ立っていた。

世界は昨日と何も変わらない。

視線は遠くにあずけ
何もみないで全てをみる。

片足立でいる理由が
すぐに動きだせるためだったのか
どうかなんてもう
かんがえたりもしなくなった。

パニエの裾を歓ばせながら
クルクル回って
バレリーナは衛兵に近づいて
そっとささやいた。

「わたしとあなたはよく似ているわ。あなたもいつも片足立ち。」

衛兵は眉を少し動かした。

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アリとカオリとアタリマエ

アリとカオリとアタリマエ

春に咲くニオイスミレの葉をめくるとタネのつまった袋をみつけることができる。

季節を問わずにみつかるようにおもう。

カオリはスミレの砂糖漬けを好む。

スミレの砂糖漬けを食べるとむせかえるような香りが口の中に広がる。

香水を食べるようで家族は誰も好まない。

しかしカオリはいかに食欲がなくてもこれだけは口にすることができる。

カオリは毎年春のある日思い立ったように、庭に咲いたスミレを全部摘ん

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大道芸人と少年ふたり

大道芸人と少年ふたり

進学塾の特別特訓が終わって
ふたりは慣れない乗り継ぎを
こなし最寄駅に降り立った。

特別特訓は拘束時間は最悪だけど
いいところがある。
開催場所がいつもの場所と違うからちょっとした冒険気分が味わえるのだ。

せっかくの冒険気分が終わってしまうのを残念に思うと、何やらいつもみない人がいる。

「あれはなんだ?」
マサシがいった。
「きっと大道芸人じゃないかな。」 ススムがこたえた。

ススムはやっ

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グレースと伝令者テオリア、そしてしばいぬ[外伝]①

グレースと伝令者テオリア、そしてしばいぬ[外伝]①

ハイノン国にはカガワーナーという町もあった。ラーナ町のはるか東、カドゥーホイの町の南西に位置し、都会的な雰囲気でハイノン国の若者はみな憧れる、雨ざらしの巨像で有名な町である。

この町の港には世界中の船が毎日のようにやってきては出てゆくのであった。外国船も珍しくはない。

この日も、大海を大きく巡回する船からたくさんの乗客が降りてきた。
その中に一匹の犬を連れた女の姿があった。

一見すると女はご

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北極星に捧げる歌

北極星に捧げる歌

短歌 お題:北極星

ポラリスは
北極星で
2等星
目立たないけど
夜空の中心

ポラリスは
不動の神の
ようでいて
実はちいさく
まわっています

くるくると
小さく回る
ポラリスの
催眠術に
かけられてみる

夜の空
オーケストラ
にたとえると
北極星は
指揮者の持つ棒

詩 ポラリスときまぐれ女

毎朝必ずやってきて
わたしたちを起こしては
毎晩どっかに行っちゃって
わたしたちを眠らせる

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