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”スコセッシ以前”のスコセッシ作品~「アリスの恋」
マーティン・スコセッシ監督が、「タクシードライバー」で”スコセッシ”になる前の作品がこちら。1974年公開「アリスの恋」
時代的に、アメリカンニューシネマなどが流行っていた時期。自身も次作「タクシードライバー」でその潮流での頂きに立つわけだが、本作もその萌芽が感じられなくもない。
主人公のアリスは、何をやっても思い通りにいかないシングルマザー。
健気にがんばるのだが、やんちゃな子どもに手を焼き男運もなく、なかなかその日暮らしを抜け出せないでいる。
60年代半ばまで当たり前としていた家庭像とは真逆の環境。それでも自分の夢を求め続けるのだが・・・
観ていると途中からだんだんやるせなくなってくる。可哀そうだからというか、これが今に至るまで世の多くの人たちの実相だからなのだろうか。
がんばれば報われる、そんな甘い言説と現実とが乖離してくるのもこの頃からに思う。
でも結局、アリスは最後には収まるところには収まる。ここがまだ「タクシードライバー」まで振り切れていない点なのだろう。
地味な映画ではあるが、本作ではアカデミー主演女優賞・助演女優賞・脚本賞を受賞している。今ではあまり話題に上がることも少ないようだけど、時代の狭間の空気を感じられる佳作だと思った。