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帝国=悪玉なのか~「ハプスブルク帝国」

ヨーロッパというと、近代日本からすれば常にその背を追ってきていた存在だ。一概に西洋が優れていたというばかりではないが、少なくとも明治以降の日本人からはそう見えていたはずだ。近代先進国の価値観とは、まちがいなく西欧由来のものだろう。

そんなヨーロッパが、ここ数年揺れている。
今回読んだのは、そんなヨーロッパの形成に強く影響を与えた帝国・家系についての本である。岩崎周一「ハプスブルク帝国」

ECからEUが発足した頃。ちょうど冷戦も終結し、いよいよEUの時代か、と思われたこともあった。なのにここへきて、求心力は失われ、逆に遠心力が働こうとしている。個々の事情は各国あるだろうが、100年以上前にもあった同じようなダイナミズムについて知っておくことは、無駄にはならないだろう。

幼いころ、「帝国」というだけで悪の印象を抱いていた。
それは、アニメやSFの影響によるところが小さくない。しかし歴史上、帝国と呼ばれる国は、本来はもっと懐が深く、多種多様な民族や文化を受け入れつつ、同時に一体性を持つ、そんな共同体だった。

それが崩れたのは、啓蒙主義が浸透しつつあった18世紀末。合わせて進行した産業革命もその後押しをした。民族自立である。一国・一民族・一言語。多くの民族がモザイク状に入り組んだヨーロッパでは、とても現実的ではない。それを実現した先に何が待つというのか。突き動かしていたのはイデオロギーだけではなかったか。
結果、二度の大きな世界大戦を避けられず、こっぴどく痛い目にあい、それを教訓として大きなヨーロッパを志向してきたのではなかったか。

最近、時々思うのは、近代的な国家という枠組みについて。
現代人からすれば当たり前に思うが、こういう仕組みができてからそれほど歴史が経っていない。そう思うと、この枠組みそのものが揺らぐというのも、ありえない話ではないのではないか、いや、一度ゼロクリアしてみた方が、うまい手立てがあるのではないか。そう、無責任にも思ってしまうのであった。

これもご参考まで。


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