孫とじぃじの奮闘記【10】
【自然体】
先日の話。
2番目の3歳の孫
ユウキが発熱と嘔吐が見られた為
迎えに来て欲しいと孫が通う保育園から連絡。
うなされていないだろうか?
泣いていないだろうか?
震えていないだろうか?
気が気ではない私は
急いで保育園へと車を走らせる。
到着し園内に入り
先生から状態説明を聞く。
生まれながらに鼻腔や気管支が
強い方ではないユウキを案じながら。
その刹那
先生の後方から声がした。
『じぃじ来たぁ〜っ!』
不安であった私を待ち受けていたのは
元気いっぱいのユウキ。
37.8の熱がありながらも
笑顔で私に駆け寄る姿に少し安堵。
彼を抱きかかえチャイルドシートに。
やはり身体は熱く
今夜は熱が上がりそうな体熱感。
車を走らせると今日あった出来事を
矢継ぎ早に話し始めた。
ケタケタ笑いながら程なくして
彼は眠りについた。
彼は心優しい男。
小さな事では よく泣くが
肝心のところでは周囲に心配を
かけまいと気丈に振る舞う。
決して無理をしているのではない。
そういう気質なのだ。
それが彼の自然体。
病院の診察開始時間まで家で過ごした。
しかし、3回の嘔吐。
私も心配と不安が募る。
その後、かなり落ち着き
病院の駐車場に着く頃には
ある程度の元気は戻っていた。
受付の女性に
『こんにちは!』
診察時、医師や看護師にも
『こんにちは!』
診察が終われば
『ありがとうございました!』
いつものユウキである。
診察結果は
風邪やウイルスでもなく
花粉や気温差での鼻水が喉に落ちて
咳が出て、咳き込む上に
咽頭反射での嘔吐であろうとのこと。
ひとまず安心。
会計を済ませて靴をはかせている時
後方から声をかけられた。
立っていたのは70歳後半の女性。
彼女は笑顔でユウキを眺めている。
彼女は切り出した。
『今どき珍しいわねぇ
ニコニコ笑って
自分から挨拶できて
お礼もハッキリ言えて。
親御さんのしつけがいいのねぇ。』
「じぃじです」と思いながら私は答えた。
『いやいや、そんなことないですよ。
今のうちから出来ないと
大人になってからでは遅いですから。』
そして彼女は満面の笑みでこう返した。
『ほんとにそうよねぇ。
でも、こんなご時世で
ほんとに珍しいわねぇ。
何か嬉しくなってしまって
声をかけてしまってごめんなさいね。
ボク、偉いねぇ。』
そう言われたが
ユウキは「ポカ〜ン」として
なぜ誉められたのかわからない様子。
そうなのである。
挨拶やお礼の言葉は
彼にとっては『当然の日常』だからだ。
それを誉められてもピンと来ないのだ。
続いて私は笑顔で彼に言う。
『ユウキ、まだまだこれからやな!』
彼は目を細めた笑顔で
『うん!』
その表情に女性は
目を細めてうなずいていた。
その女性と彼はお互い笑顔で
『さようなら』の言葉を交わした。
おそらく、この会話は彼にとって
かけがえのない体験となり
成長の「きっかけ」になるだろう。
たとえ、この記憶が残らなくても。
私は彼の小さな手を取り駐車場へ。
車に乗る時、ユウキは真顔で
『じぃじ?ユウキは偉いの?』と
とぼけた顔で私に聞く。
私は答える。
『この世に偉い人なんて1人もいない。
でも、ユウキはそれでいい。』
彼は『そっかぁ!』と
再び満面の笑みを見せた。
これが彼の自然体であり本質。
誰かに誉められる為にやるのではなく
全ては『当然の日常』で在り続ける。
そういう彼の心根を
私は魂の底から誇りに思う。