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2020年1月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第二章
三、
引き金を引けば、そこで終わり。
鉄の弾丸は、防護スーツを貫通し、即死。
あるいは、打ちどころが外れ、即死できなかったとしても、凍死によって確実に死ねるだろう。
だから、引き金を引いてくれさえすればよい。
なのに、何故、毎回、こうなってしまうのだろうか。
指を離すその瞬間、リトリは私の目の前で、その銃口の行先を変えた。
即ち、自分のこめかみへと銃口を向け、あっけなく、そ
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第二章
二、
真っ白な髪が風に揺れた。
冷たい風が私達の間に吹く度に、彼女が着ていた白い服がたなびく。
この寒空の下、純白のワンピースだけを身に纏っている彼女の姿は、
見ているこちら側が思わず身震いをしてしまう程、寒々しかった。
だが、当の本人は、全くそれらを感知していないのだろう。顔色一つ変えず、ゆっくりと歩きながら私の方へと近づいてくる。
私はそこから一歩も動く事も、否、身じろぎ一つ
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第二章
一、
だが、いつだって終わりは突然やってくるものだ。
あれは、何度目かの調査に出た時の事だった。
調査には、安全面を考え、主に私と副島博士の二人で行うことが多かった。防護服に身を包み、調査をし安全と我々が判断した場所は、後日、ワームの仲間が西暦時代の物資や資源を収集しにくる。そうして、サカイでそれらをエネルギーや必要な物資へと交換する。壁の中から追い出された私達は、そんな生活を
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第一章
三、
ミハラは独自に、自殺者の件について調べていた。ワームに来る前から、彼は独自のルートを使い、増え続ける自殺者について調べていたのだ。そうして、彼はナインヘルツが壁の中で行っていたことについて知ったと私に教えてくれた。
強制的に行われた共感覚の作用や、トリプル・システムにより、人々から色や感情を奪ったこの行為がどんな罪に問われるのか。私達は結末を予測できていながら、ナインヘ
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第一章
二、
ポッドで壁の外を飛行する度に、私達は様々な発見をした。
その中でも大きかったのは、壁の外の大地に僅かながらも芽吹いていた植物の存在だろう。
死滅したと思っていた大地は、傷つきながらも確実にあの時から生き続け、人間の手を借りることなく、再び立ち上がろうとしている。
無論、その僅かな存在があったからといって、今すぐ壁の外で住めるという保証ができるわけではない。だが、その可能性
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第一章
一、
貿易商人の彼とは、もう随分と長い付き合いになる。
彼が私の研究の事や、私がナインヘルツで何をしていたのか、その全てを知っていたとは思えないが、ナインヘルツの研究者でしかなかった私が、自分が起こした事に対する結果を知る事ができたのは、彼のお陰だった。
ワームという組織を、ナインヘルツの目を逃れるように起ち上げ、私はサカイに逃げ込んだ人々に対し支援を続けた。たとえ、外の物資