- 運営しているクリエイター
2019年11月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界
第七部 第二章
二、
人がはけた後のホールはがらんとして、どこか物寂しさを覚える。
それは、熱気の後故に来る感情なのだろうと、ケイは思った。
だが、それ故に気が付いたこともあった。
ホールの白い壁一面に描かれた絵だ。人がいたため、今まで気が付かなかったが、それはこの空間を取り囲むように四方の壁一面に描かれていた。
最初の絵は、黒い髪を風に揺らし、どこか遠くを見つめる女性の横顔とその視線の先
モノローグでモノクロームな世界
第七部 第二章
一、
出番だわ。
そう僕らに小声で告げると、リトリはステージへと戻っていった。
程無くして、開演を告げるブザーの音と共に、今まで灯っていた天井の灯りが消える。
ステージから溢れた灯りに照らされ、浮かび上がる人々の顔は、どの顔も皆、期待と興奮が入り混じり、今か今かと心待ちにしていた。
そんな表情をしている人をこんなにも沢山、見たのは初めてだった。少なくとも、十月国では、こんな
White NOise #11
灰色の夢を見た。
淡い色に灯されて、僕らは一斉に夢を見た。
蜂の翅がこすれる音で、脳が支配される。
不快も、悲しいも、寂しいも。
皆、麻痺していく。
翅の音は、次第に小さくなり、
僕達はそこに白い世界を夢見た。
誰かが叫ぶ聲も、
誰かの泣き声も、
何もかも呑みこんで。
僕らはただ幸せという形を想い描いた。
形骸化した幸せという形を。
モノローグでモノクロームな世界
第七部 第一章
三、
赫。
黄色。
緑。
紫。
ステージに設置された照明の色が切り替わるその度に、瞳が一色、一色を捉え、記憶の中の色とその情報を合致させていく。
これは何の色だ?
網膜が色を捉える度に、パズルのピースを当てはめるかのように、記憶の中の、否、もっと奥にある答えを求めて脳が躍動する。知らないものが判明した時の快感は、今まで味わったことが無い程、爽快感が伴った。
『色がこの世
モノローグでモノクロームな世界
第七部 第一章
二、
長く白い髪をたなびかせながら前を歩く女性の後ろについて、ポッドの中をひたすら昇り降り続け、長いスロープを歩き続ける。
真っ暗な回廊の壁には、ライトが等間隔に設置されており、三人が歩くスピードに合わせて、体温を感知したライトが灯っては消えを繰り返していた。
見えすぎず、それでいて見えないわけではない。
ライトが作り出すその絶妙な薄闇が、真実を包み隠さず明かそうとしないこの空間
モノローグでモノクロームな世界
第七部 第一章
一、
よくこんな巨大な舟をあんな地下に隠していたものだ。
それが、第一印象だった。
ケイは半ば感心しつつ、自分が今いる飛行船の中をぐるりと見回した。
サカイの地下空間を抜けた飛行船は、外側と内側の世界を分断する壁を
あっさり抜けると、真っ暗な闇の中を飛行し続けていた。
ポッドと呼ばれる舟の中は、大きく四区画に分かれており、航行を司る司令塔のエリア、食堂やベッドルームが並ぶ