「おしゃれにならなければ」という呪い【おしゃ呪解vol.1】
こんにちは。服装心理カウンセラー・スタイリストの久野梨沙です。
あなたに巻き付くファッションへの思い込み・・・「おしゃれの呪い」をばっさばさと解いていくこの企画、略して「おしゃ呪解」。
記念すべき第1回目は、私自身がかつてかかっていた「呪い」について書いてみたいと思います。
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服を着るならおしゃれでなくちゃ。
そう思っていた時期が私にもありました。というか、アパレル業界に入る人なら誰しもそう思っていた時期があるだろうし、何なら現在進行形で、疑いなく、そう思ってるって人も多いと思う。
おしゃれである、とは。
垢抜けているということであり、
高いデザイン性のものを着ているということであり
流行を真っ先に取り入れるということであり、
自分に似合うものを着ているということであり、
目を引くものを着ているということでもある。
そして私は、「おしゃれ」という言葉から連想されるようなチャラチャラした感じでそれを楽しんでいたのではなく・・・・・・どちらかといえば、似合う言葉は「求道」。
そう。「どうせ野球をやるなら甲子園を目指すのだ!」的なストイックさで、私は追求していたのですよ、「おしゃれ」であることを。
そんな私が、いわゆる就職氷河期の「底」と言われた年に念願叶って滑り込んだのは、入りたくて仕方なかった大手アパレルメーカー。しかも大本命の企画職。初めはアシスタントだったけど、入社2年目には念願の自分のブランドを持たせてもらえました。当時の空前のブームだった「ジュニアブランド」を立ち上げることになったのです。
ジュニアブランド。小学生高学年から中学生までをターゲットにしたブランドのことですね。
そのブームを牽引していた二大雑誌、それぞれ看板モデルは新垣結衣さんと大沢あかねさん。定期的に行われるファッションショーは大盛況で、人気のブランドの新作商品は発売と共に完売。ニュースにも取り上げられるほどに、社会現象となっていました。
そんな当時のジュニアブランドといえば、ごちゃごちゃがちゃがちゃとにかく賑やかなデザインで。
でも私が立ち上げるブランドは、既に社内にあったレディースアパレルブランドのセカンドラインという位置付けだったので、大人服の延長戦でデザインを展開することになっていて、それが私はとても嬉しかったのです。
がちゃがちゃしたデザインはジュニア的ではあったし面白いとも思ったけれど、私の中の「おしゃれ」とは違うものだったから。
かくしてMD(マーチャンダイザー)として企画の陣頭指揮を取ることになった私。私の思う「おしゃれ」を詰め込めば、売れるに違いない!と鼻息荒く腕ぶん回して始めたののだけれど、現実はそうではなく・・・・・・。
ブランドが立ち上がってみて一番初めに「売れ筋」になった商品は、まったく予想外のトレーナーでした。トレンド感があるわけでもなく、何というか、すごく、無難なトレーナー。
あれれ、おかしいな、と。でもその後も、売れるのは私がイチオシするアイテムとは違う商品で。
そこで、私、思った。
「そうか! 子供服だから、お母さんが選んでるんだな。他のジュニアブランドのデザインが派手すぎると感じてるお母さんが、うちでこういうシンプルなもの買ってるんだな」
って。
これは確かめに行かねばと、勇んで何週か連続で店頭に販売に立ってみました。
そしたら選んでましたよね。着るご本人自らが。私が「無難」と心の中で斬って捨てたアイテムたちを、うれしそうに。
そんな現場を目の当たりにしてもまだ石頭な私は「そっか〜、まだ中学生だからおしゃれがわかんないか〜」とばかりに「こちらのアイテムなんかは今季の流行で〜」なんつって解説してみたり。超迷惑。まぁ当然、響かないことこの上なかったです。
そんな現場を3週くらい経験して、やっと、やーーーっと理解しました。
服に「おしゃれである」こと以外の着る目的を求めている人がいるらしい。それも私が考えているよりずっと多く。いやむしろ、「おしゃれである」こと以外を求めている人の方が多いかも知れないぞ。
野球をやるっつったって、甲子園に行きたい人ばかりじゃないんだ、と。
そんな大ショックを受けてあれこれ考えているうちに、人はどんな服が欲しくなるのかをもっと考えたくなって、転職。某大手ジーンズブランドでひたすらどの服が売れるかを予測するっていう仕事をしました。でも1型何万本売れるっていう数字の向こうにある「個」をもっと見たくなりました。でもそんなことが出来る職種はアパレルメーカーには見当たらなくて。
そんなこんなで、その当時アメリカで流行し始めていた「パーソナルショッパー」の日本版を始めよう、と起業しました。それが、今メインでやっているパーソナルスタイリストという仕事です。一人一人に向き合って、その人の「着る目的」を追求して叶える仕事。
起業後はいろいろなご縁があって、企業の社員さん全員まるごとスタイリング!とか、商業施設のイベントで来るお客様ひたすらスタイリング!とか。マンツーマンのスタイリングに限らず色んなお仕事を頂けたことで、この13年間でのスタイリング件数は2万件を超えたと思います。
おかげで、社会人2年目のときに気づいた以上に、様々な「着る目的」と出会うことができました。
結局、私がかかっていた「おしゃれでなければ意味がない」という呪いは、色々なお客様に解いてもらったんです。
好きな服を着るときの気分の盛り上がりに比べたら、似合うかどうかなんて些細な問題だっていう人もいるし、自分が引き立つ服よりそのシーンに溶け込む服を着る方が落ち着くって人もいる。
足がきれいに見えるパンプスを「走れないから」という理由で履かなくて何が悪い?世の女性がみんな「足を綺麗に見せたい」と考えていると思ったら大間違いだ。
この仕事を通じて教わった価値観一つ一つが興味深くて、すっかり、ファッションに関する先入観や固定概念はすっこーーーんと、虹の彼方へ。
そうしたらね、驚くことに。
ファッションが前よりもっともっと面白くなったんですよ。
100人いれば100通りの「着る目的」がある。
あなたの着る目的は、なんですか?
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ぜひ、あなたに巻き付く「おしゃれの呪い」もお寄せ下さい。心を込めて、その呪い、解かせて頂きます。
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