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"モザイクのこちら側"

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私がAV女優・宍戸里帆として活動していく中で、感じた事や考えた事を綴ります。
運営しているクリエイター

#エッセイ

Tiny Dancer

Tiny Dancer

自分の身体が自分のものでは無いような経験をした事がある人は、この世界にどれくらいいるだろうか。
かくいう私もそのうちの一人だ。

私が自身の異変に気付いたのは、小学校高学年くらいの頃。
体が上手く動かなくなる事が頻繁に起こるようになった。
トリガーとなるのは静止している状態から動き出すといった、日常生活におけるちょっとした運動。
短距離走のスタートダッシュ、黒板に解答を書きに席を立つ瞬間。
最悪だ

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おっぱいが大きいということ

おっぱいが大きいということ

知っている人がほとんどだと思うが、私はおっぱいが大きい。
結構大きい。

生粋の巨乳として22年間生きてきた。
それゆえ、大きいおっぱいの功も罪も熟知しているつもりだが、今更おっぱいが大きい事で生じる日常生活での支障などを書き連ねようとは思っていない。
このnoteを書こうと思ったのは、つい先日、おっぱいの間でぺしゃんこになって死んでいるコバエを見つけるというショッキングな出来事に遭遇したからだ。

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ドブネズミみたいに美しかった、あの青春の日々。

ドブネズミみたいに美しかった、あの青春の日々。

私が軽音楽部に入部するきっかけを作ってくれたのは、中学三年生の時に見た『リンダ・リンダ・リンダ』という映画だった。
最後のシーンで『リンダ・リンダ』を歌うペ・ドゥナの横顔を見ながら、"私もこれになりたい"、とぼんやり思った。
それから一年後。
高校生になった私は迷わず軽音楽部に入部した。

バンドってどうやって始めるんだろう。
そんな事を思いつつ、軽音楽部の第一回目の集まりに参加した。
ミーティン

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BABY

BABY

女の子って不思議な生き物だ。

この前、江口寿史の「彼女展」を見に行った時にそう感じた。
"彼女" という普遍的な匿名性を纏った女の子たちは皆、知らない街で偶然出逢ったみたいなのに、アパートの隣の部屋に住んでいそうでもある。
柔らかい肌の温度が今にも伝わってきそうで、でも触れたら一瞬で消えてしまう幻みたいで。
誰かのものなのだけど、まだ誰のものでもないような、とても、とても曖昧な存在。
その全てが

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ホットドッグ人生

ホットドッグ人生

パンク過ぎる。
今まで聞いてきた言葉の中で最もパンクな響きだ。(適当)

「ダイガクドー ダイガクドー
  おひかえなすってダイガクドー
  かたじけないけど ダイガクドー」

この一文をメロディに合わせて歌える人はどれくらいいるのだろうか。

去年フランスに行った時、道路でクレープの移動販売の車を偶然見つけ、怒涛の勢いで子どもの頃の思い出がフラッシュバックしてきた。
公園の入口の前、ピンクの

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現在進行形のあなたへ。

現在進行形のあなたへ。

「おおきくなったらどんな人になるのかな」
「この子は何が好きなんだろう」
「顔はお父さん似だね」
「優しい子になりますように」

お母さんのお腹の中で居眠りをしていたから、予定日よりもだいぶ遅れてこのお寝坊さんが生まれたその年に、私の知らない思い出の中では、一体何人の大人達が私のまだ見ぬ輝かしい未来に思いを馳せ、どんな声をかけたのだろう。
この小さな生き物にとって、世界の全てが "ママとパパ" だ

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What a beautiful people.

What a beautiful people.

電信柱に寄りかかって真昼間から国語辞典と睨めっこするおじいさん。
折れたヒールを片手に持ち、素足で白線の上を歩くスーツ姿のお姉さん。
電車の中で涎を垂らしながらずっとこっちを見てくる赤ん坊。
トラックの荷台に足だけ出して昼寝する工事現場のお兄さんと、通行人より彼を見守るガードマンのおじさん。
三人で一つのパフェを囲む喫茶店にいたサラリーマン。
道の真ん中で泣きながらキスをしていた外国人の女性二人。

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「日替わり定食 700円」の店で育つということ。

「日替わり定食 700円」の店で育つということ。

知っている人もいるかもしれないが、私の家は下町で小さな飲食店を営んでいる。
ふと、「飲食店の子特有の思い出みたいなものがあるのかな」と思ったので、せっかくだからここに書いてみる事にする。
※画像のお品書きは私の家のものではありません!あくまでイメージです!!🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️

そこは元々母方の家が始めたお店だった。
会社員だった両親は結婚して私を産んだ後、しばらくして脱サ

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