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読書|きみの存在を意識する

自分にとっての当たり前は、誰かにとっての当たり前じゃない。ひとりの人間が感じられる世界は、限られています。

中学2年生の5人が語りの短編連作集。筆者の想いは、最後の一文に込められていました。

あの子がそんな風に困っていたなんて、
全然気づかなかった。
なんていう大人にならないように。

P329

主人公の5人はそれぞれの特性を持っています。字を読むのにものすごく時間がかかる子や、筆記は苦手だけどタイピングは得意な子、匂いに敏感で教室に入れない子など。

”教室”という子どもにとっては大きな世界の中で、自分が他の人の感覚と少し違うと気づいた時「大袈裟だ」「努力次第でなんとかなる」と同級生や大人に言われたら、どうでしょう。

そうなのかもしれない、自分でなんとかしなければいけない、と自分を追い込んでしまう人。どうして自分のことを理解してくれないのか、と怒りが沸き、世界と距離を置いてしまう人。

辛い、困っている気持ちをただ聞いてほしいと思っていても、困難な状況は克服できるものだと周りが決めつけてしまっては、その子自身のためになりません。

物語には、デリカシーのない友人や昔の価値観で偉そうにしている先生も登場します。みんなと同じように教室で授業を受けるのが当たり前、そしてそれをできる子がいい子。これが当然でしょ?と言い切る先生を見て、腑が煮えくり返りました。私は読書をしていて好きじゃない人が出てくると、しっかりムカつきます。

ただ、自分にはない困難を抱えた人がいたとき、果たしてその人の声を聞くことができているだろうか、と考えると自信はありません。

もしかしたら、私だってムカつく先生のような決めつけの価値観を振りかざしている瞬間はあるかもしれないのです。そう考えると、自分にとっての当たり前を信じすぎてはいけないと感じます。

また、誰かの存在を意識して生きていくことは、周りまわって自分が心地よく生きていくためにも大切なことだと思いました。自分がいつ、どんな場面で困難にぶち当たるかなど、わかりませんからね。

本書は、中学生の女の子にオススメされた一冊。こうやって、普段自分が手に取らない本を読了するのも楽しい時間です。もし、他の場面で中学生に本をオススメするとしたら「きみの存在を意識する」を紹介したいと思えるくらい、子どもに読んで欲しいと思う一冊でした。




前回の読書記録はこちらです。



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