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海山道凛太郎
2024年3月11日 17:59
裕福な家でもなく、学歴もなく、スポーツも微妙、顔も良くなかった私は、大した人生を送れることもなく、なんとなく社会人になった直後、仕事帰りの道でありふれた交通事故に遭い、特にニュースになることもなく人生の幕を下ろした。なんともつまらない人生だった。なんでこんな人生だったのだろうか。努力が足らなかったのだろうか。確かに、勉強も、運動も、オシャレも対して頑張ったわけでもない。何か人に胸を張
2024年3月12日 16:30
せっかく転生した世界でも、私は平凡な才覚で生まれた。王宮の兵士の父と、武器屋の娘の母の間に生まれた私は、幼いころより剣を遊び道具として育ち、いずれは勇者として、また魔法の才能がなければ勇者をサポートする戦士として、活躍することを夢に見てきた。しかし、残念ながら、この世界でも遺伝というものがしっかり機能していて、私の剣の技量は父の職業である一般兵士のそれを大きく上回るものではなく「ちょっとだ
2024年3月14日 19:47
「おお聖女様、お目にかかれて光栄でございます」「高名な聖女様、ぜひ私の領地にもお越し下され」「聖女様、ご機嫌麗しゅうございます」宮廷の社交界の場に参加した若き僧侶に、王国の名だたる貴族たちが、皆、恭しく頭を下げる。教会の権威者の娘である彼女は、幼い時にたまたま聖典の一部を暗唱したことで周囲から驚かれ、それからは「奇跡の聖女」として各地の祭事や、災害救助などの教会の事業に随行し、広告塔と
2024年3月18日 15:15
とある小さな村に着いた。豊かな森に囲まれ、清らかな川沿いに広がったのどかな村だ。日はだいぶ傾いてきているので、今日はこの村で泊まることになるだろう。野営が続いていたので、柔らかいベッドで眠れることがありがたい。我々男性陣はそれほど気にしていないが、唯一の女性である僧侶は風呂にも入りたいだろう。「私だけでなく、皆さんもお風呂に入ってくださいね、どちらかというとあなた方の方が臭いますの
2024年3月1日 06:25
街の酒場で評判の歌姫がいた。 時に繊細で、時に力強く、心に響く彼女の歌は酒場の客の楽しみだった。 ある時彼女は街を出る決意をする。 王都で歌手として名を上げ、王の祭で歌うためだ。 客たちは悲しんだ。 「この街でいいじゃないか」 「都なんて危ないよ」 「俺たちを捨てないでくれ」 思った通り口々に反対の声が上がる。 だが、彼女は気が付く。 誰一人、彼女の歌が都で通用しないとは
2024年3月3日 22:25
私の住む街は、傭兵の街だ。南の王国と北の帝国との国境付近に位置しているこの街は、昔から幾度となく戦場となり、その都度、多くの人々が犠牲になってきた。荒廃した街で、家も親を失った戦争孤児たちの多くが行き場をなくし、人身売買さながらに傭兵団に安く買いたたかれ、そして少年兵として武器をとって戦う。この街が豊富な傭兵の戦力を備えているのはそのためだ。そして両国はその豊富な傭兵を戦力として、ず