【連続note小説】日向食堂 小日向真司64歳
あおいが死んでから一年が経とうとしていた。
あおいの告別式の翌日から真司は日向食堂を開けていた。
優子も幸次もしばらく休むように言ったが、真司は黙った頷くだけで言うことを聞こうとはしなかった。
そんな真司を誰よりも理解していたのは吾郎だった。
吾郎も休まずに働いた。
ある日、真司が吾郎に言った。
真司:「吾郎、ずっと休んでないだろう。
明日から休んだらどうだ」
吾郎:「オヤジさん、休まないのなら、おれも店に出るよ」
真司:「吾郎、無理するな」
吾郎:「オヤジさんこそずっと休んだないだろ。
休みたくても休めないんだよな。
家にいたら奥さんのことを思い出して、泣いてしまうんだろ。
おれも付き合うよ」
吾郎に何もかも見透かされていた。
真司はそれっきり黙り込んでしまった。
自分でもなぜ店を開け続けるのかはっきりわかっていなかった。
吾郎にそう言われるまでは・・・。
気がおかしくなりそうになるのを、働き続けることで誤魔化し続けていた。
吾郎はそれをわかっていて、一年以上も何も言わずに付き合ってくれていた。
真司:「吾郎、明日は休もうか。
おれは釣りに行ってくるよ」
吾郎:「いいっすねぇ、おれも付き合うよ。
やったことないけど」
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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