生きる力を育む④〜そして暗闇の終わりへ〜
①不登校への決着
ほとんど中学へ行けないまま、進路選択の時が迫っていた。先生から面談の呼び出しがあった時、普段私に優しいお兄ちゃんから、自分が代わりに面談に行くから、私は行かなくていい。私には行ってほしくない。何故なら弟は学校生活を楽しみに中学生になったのに、ずっと学校に行きたかったのに、でも行かれなくなって楽しいはずの中学校生活はとても辛いものになった。それなのに、いつも私は学校や先生の味方をする。弟の代わりに戦うことをしない。だから最後くらい自分が代わりに学校や先生たちに言ってやるのだ、もっと弟の気持ちに寄り添ってくれたら全く違った3年間だったはずだと。親なら自分の子どもの気持ちを一番に考えて欲しい、このまま一度しかない弟の中学生が終わってしまうのはあまりにも可哀想。きっと私は先生から一般論を言われたらそうあるべきだとまた弟の方に我慢をさせるのだろう。だから自分が行くのだと言い放った。硬い凶器で殴られたような衝撃的な言葉だった。
②進路選択
結局面談は本人と兄と私の3人で向かった。兄は私よりずっと頼もしかった。学校や先生の対応がどれほど彼を傷つけたのか、彼を傷つけた生徒たちは普通に楽しい学校生活を送り進路が決まっていく中で、自分だけが取り残されてダメな子にされていく理不尽さ、怒り、悲しみ、私も分からなかった次男の気持ちを見事に代弁してのけた。そしてきちんと気持ちを拾ってくれた兄の横で、次男はやっと自分の気持ちを自分の言葉で先生に話をすることが出来たのだった。私は今まで事なかれ主義の常識人過ぎて、子どもの気持ちを置き去りにしていたのだ。世の中に出れば理不尽な人はいくらでもいるのだから、黙って我慢するしかないと彼に言い続けてずっと逃げていたことに気付かされた。
③暗闇の終わり、明るい未来へ
彼は面談の後吹っ切れたように明るくなった。高校へ進学したいけど、勉強に不安があると言うので、一緒に彼にとって一番良い高校を探し始めた。今更過ぎてあまり効果的とは言えないけど、近所の個別指導の塾にも通ったりして。結局学校に通うことにまだ抵抗があった彼は、オンラインで授業を受けられる学校に進学を決めた。
そんな頃落ち着いてきた弟に安心したかのように、兄は家を出て一人暮らしを始めた。次男もそんな兄を見てか自分も働きながら学校に行きたい、家を出て一人暮らしをしたいと強く望むようになった。私は悩みに悩んだ。いくら働きながらと言っても経済的に援助は必要だし、なんといってもついこの間まで不登校中学生だったのに、高校進学間もなく1人でなんて大丈夫だろうか。私の中ではまだまだ子どもの感覚のままで、なかなか決断出来ないでいた。
④一人暮らし
進学した高校のシステムは次男にピッタリだった。毎月きちんと遅れずにレポートを提出することも、4月から始めたアルバイトも順調に頑張っている姿を見て、高校1年の夏休み私は決断した。その頃にはすっかり憑き物が落ちたかのように、私への暴言もなくなり感情的にならずに普通に会話が出来るようになっていたので十分話し合いをして、いくつかのルールを決めて一人暮らしを許可したのだった。まだまだ未熟なのは十分承知の上、けれど社会から学ぶ彼の成長に期待して、寂しさと心配の気持ちをグッと堪えて手放す覚悟を決めた。
3年後無事に高校を卒業し社会人となった彼は、しょっちゅう電話をくれて私の身体を気遣ってくれる優しい息子へと成長した。あの頃を振り返って暴言は本当にすまなかったと、あの時の気持ちまできちんと話せるくらいに立派に乗り越えてくれた。私はそんな息子を誇りに思う。そして寂しさと心配な気持ちを抑えて、あの時信じて外に出して良かったと今は心からそう思っている。
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