アカデミック読書会(第36回)- 地中海と瀬戸内海の類似性 -
読書会概要
12月23日(木)、20:00~21:30、オンラインにて、アカデミック読書会(第36回)を開催しました。参加者1名、ファシリテーター1名の、和やかな読書会でした。
前回に引き続き、課題本は、フェルナン・ブローデル『地中海I』「第I部 環境の役割 第2章 地中海の心臓部 -海と沿岸地帯-」、テーマは、「環境と人間との関係とは何か?」です。前回は、諸半島(山、高原、平野)に焦点が当たっていましたが、今回は、地中海の心臓部(海原、沿岸地帯、島)に焦点が移ります。
対話を進めるうちに気づいたのが、海と陸が複雑に入り組んだ地中海の地形です。海盆、海峡、島々が点在している様子は、日本の瀬戸内海の風景と類似しています。ブローデル『地中海I』には、時折、「海賊」という言葉が出てきます。日本では、瀬戸内海で「村上水軍」(※注1)が同時期に活動していました。地中海と瀬戸内海は遠く離れており、直接的な影響はないと考えられますが、不思議な同時代性を感じさせます。
日本史で見ると、1467年に応仁の乱、1582年に本能寺の変、1585年に惣無事令(注2)、1603年に江戸幕府開府、という流れがあります。既存の秩序の崩壊から、武力による実力主義の時代を経て、平和と秩序の時代へと、少しずつ意識の転換がなされている点で、日本もまた、時代の大きな変化のなかにあったと言えると思います。
今回は、長い16世紀における、ヨーロッパと日本の類似点について考察できる読書会でした。ご参加されたかたには、厚く御礼申し上げます。
注
注1)村上水軍
注2)惣無事令
読書会詳細
目的
陸とは違う、海の特性とは何か?、知見を得たい
問いと答えと気づき
Q
島での生活とはどんなものだったのか?
A
不安定
飢饉
窮屈
移住もしたりする
政治にも関わったりする
気づき
日本とよく似ている
スケールの割には大きな役割を果たす
ブラジル移民、ハワイ移民は、マルサスの人口論的な話し?
飢饉は江戸時代でクリアしたのか?
Q
海の暮らしとは何か?
A
戦い
沿岸航海
海賊
食糧不足
気づき
自由
警戒心
戦い
対話内容
地中海(ヨーロッパ)と瀬戸内海(日本)の類似性
なんでトルコやスペインなのか?
1500年代、日本でも村上水軍があった
治水は江戸時代盛んだった
地中海の範囲は広い
陸伝いがあるから、無理をしないでもよかった
沿岸で行われていたのは、貿易や補給(給水や薪)
日本の和歌山に似ている(沿岸の補給路として栄えていた)
陸路と海路はどちらがメインだったのか?
→陸路は、ものを運ぶのはしんどい川を使った輸送の話は?
地中海は、瀬戸内海に似ている
地中海とナショナリズムの関係とは?
スラブ系といわゆるヨーロッパ人とは違う
ローマ帝国という同じ出自を持ちながら、別の国になっている
→そのことについてどう思っているのか?海賊でも感覚が違うのではないか
ブローデルとウォーラーステインを交差させる
黒海は重要な経済地域である
コンスタンティノープルは、近隣の貿易と遠方貿易を独占した
黒海は西洋に対して閉鎖される
エーゲ海:悲惨な状態にある
木が生えているところが大事
アムステルダムは、木材を輸出して栄えた
『地中海』と『近代世界システム』をくっつけるとおもしろそう
有機経済は、収穫逓減(=農業社会や商業社会)
無機経済は、収穫逓増(=工業社会)
アダム・スミス:まだまだ有機経済が主流の世界、収穫逓減寄りだった
経済学は、収穫逓増に着目するのが遅れた(50年くらいの遅れ)
同時代性(地中海と日本でなんとなくリンクする)
貿易に注目している
陸は人の移動、海はモノの移動(=貿易)
陸は物流がなかった? 治安は?
山賊は儲からなさそう
匪賊行為(強盗、×山賊)→貴族が行った(『近代世界システムI』p.159)
山には貴重なものはなかったのかも
気づきと小さな一歩
気づき/学び
地中海と日本(瀬戸内海)でも、謎の同時代性はあった(海賊のあり方)
地中海と瀬戸内海の厳しさは、同じものかも(山に海が迫っている)
小さな一歩よそに行ったときに、類似性を考えてみる
次回の読書会のご案内
開催日時・場所:2022年1月上旬予定 @ZOOM
テーマ:環境と人間との関係とは何か?
課題本:フェルナン・ブローデル著、浜名優美訳『地中海I 環境の役割』「第3章 地中海の境界、あるいは最大規模の地中海」
詳細・申込み:決まり次第お知らせします