見出し画像

兵庫県立美術館で個展 riluskyE ~ あなたを巡る旅へ



まずは、使用申請書類の提出からスタート

( コロナ禍以前の話になりますので、現在とは状況が異なるかもしれませんが、人間の動きと心に大きな変化はないと思うので、あえて、過去の経験を蘇らせました )

初めての個展は、前年度に地元福岡市の美術館二か所で行ったので、今度は遠い県外に出たいと漠然と思っていました。新幹線移動も視野に入れてネットで中部地方までの各美術館のHPをチェックしていると、この美術館のHPで展示室の利用に関する記載がありました。ただ、具体的な手順はわからなかったので電話で問い合わると、展示室はいわゆる「貸しスペース」ではなく、学芸員による審査があると言われ、そのことを承知したうえで申請をお願いします、とのことでした。

それから、ポートフォリオ的な作品資料を用意して、兵庫県立美術館ギャラリー棟3階の使用希望を前年の2011年12月に直接現地に行って申し出ました。担当の方より、申請する前に一度現地を見学されてくださいと言われていたからです。その後、美術館側のスケジュール調整のため保留期間が長く続き、翌年2012年6月にやっと正式な申請書類を郵送で提出し、中旬に正式決定となりました。それから慌ただしくいろいろ準備を進めました。

兵庫県立美術館の印象

この美術館は、阪神・淡路大震災後に場所を移転して建造されており、海に面する壮大で斬新な外観の建物です。内部も地理を生かした広がりと凝縮のある素晴らしい設計だなと思いました。使用する約200平方メートル近い広さの会場もまだ真新しく贅沢な空間という印象で、ここを使用できることは
「幸せで誇らしいことだ」と思わせるものがあります。

なぜ、あんなのが居るの?

ただ、実際に1週間ものあいだここに通い、来場者の動きを見ていると、特に高齢者の方々にはちょっとわかりにくい構造であり、使いづらい面もあるようです。
自然の採光を見事に利用した内部空間ですが、回廊部分で受付をする場合など、場所によっては照明にもっと明るさが必要だと思いました。でもここを
気に入った人なら何度も訪れたくなる不思議な魅力もあり、超広角レンズ向けのカメラ・スポットも多いです。

展示会場前の廊下

搬入日にハプニング

10月30日の午前10時より搬入という段取りでしたが、ちょっとしたハプニングが発生。先週まで開催されていた展覧会の終了後に、仕切り用の巨大な移動壁の再塗装処理が専門業者によってなされたらしいのですが、信じられないようなうっかりミス( 塗料と回転把手が付着して動かない )が原因となって、午前中は壁を移動することができませんでした。

( ちなみに、神戸は自家用車で行く距離ではなかったので、作品資材はヤマト運輸に配送依頼、自分は新幹線移動でしたので、別途費用が増えてしまいました。)

午後よりやっと作業を開始でき、何とか準備を9割までは終えて18時には宿泊ホテルに帰りました。

準備開始直前の状態

いよいよ10月31日より11月4日まで5日間の個展開始

現地に家族・親戚・知人・友人など全くいない、案内状を送る相手も全くいない状況下で、客観的には無謀でしかない個展開始!
初日より3日目までは来場者数は25人前後。ところが11月3日文化の日になると、来場者数は74人となり、最終的には208人でした。当然ながら、他の会場から流れてくるお客さんが大多数でしょうが、一部には広報ポスターを見て来ましたと言う奇特な方もおられました。
前回の愛知芸術文化センターほどではありませんでしたが、いろいろな方と話をする機会もあり、名刺やお褒めの言葉も何人かの方より頂いて、有り難いことでした。

重厚かつ風雅な会場

初老の画家の一言

美術館のギャラリー棟3階にある会場は、3ブロックに分かれ、創作書の会員展と女性の現代美術家の個展も行われていました。

ある日、会場入り口前の受付をゆっくり通過しようとしていた男性に、「よろしかったら見ていかれませんか」と、私はなぜか声をかけてしまいました。しばらく展覧されて会場を出て来られると、しばし私の顔を見て話かけてくださいました。

「心象風景をお描きのようですね。私も心象風景を描いてグループ展覧会に出品しています。ただ、作品数がものすごく多いので、いい作品だと思っても集中して見られないですよ。自分がこれだと特に見せたい作品のまわりはできるだけ遊びの空間を空けたほうがいいですよ。」

私はこのコメントの意味することがすぐにわかりました。その初老の画家が帰られたあと、会場を見渡しました。所狭しと作品を敷き詰めるように
並べていました。さっそく何点か取り外しました。このような指摘こそ、無所属で美術系の人脈など全くない自分にとってはとても貴重な助言となります。名前もお聞きしませんでしたが、その方のことはとても印象深く心に刻まれました。

視線の遥か背後に  
created by riluskye   2012

働く人間のタイプ

自分の知る限りでは、美術館で働く職員には大きく3グループに分かれるようです。作品に関する研究や企画を行う学芸員、実務と管理運営に取り組む職員、そしてセキュリティ担当の警備員。普段の展覧会活動でお世話になるのは、当然ながら職員と警備員の方々です。

今回の兵庫県立では、希望申請のときから同じ担当職員の女性Fさんにずっとお世話になりました。私が遠方(福岡県)に居るために現場を確認できないので、メールでのさまざまな質問や相談に親切丁寧に根気よくお付き合い下さり、また必要な図面や資料も送って下さり、大変助かりました。会期中もいろいろな面でお世話になったことは言うまでもありません。

私がなぜこのような話題に触れるかというと、どんな職場や業界でもそうでしょうが、働く人間には大きく3種類いるように思うのです。

1を聞いて5~10の応えをくれる人
1を聞いて1だけ応える人
1どころか何も応えようとしない人

これは、その人の人柄や思いやりだけでなく、想像力の問題なのだと、かつて被雇用者であった頃の自分自身への反省も込めて、そう思うのです。


また別の光景へ   
created by riluskyE   2012

兵庫県立美術館・個展での使用情報(コロナ禍以前での状況)

 +は良い点、 
?は今後の改善を望む点


使用料:
6日間で約7万円は地方都市に比べると割高 
使用会場面積:
約200平方メートルでほどよい広さ++
使用会場:
高い天井、立派な造り、ただ場所がわかりにくい??
展示方法:
ワイヤーレール、釘、押しピン等 
独立可動壁:
利用するには業者依頼が必要で高額の請求あり???
広報活動:
県の公式文化情報誌への記載あり++
宣伝用掲示:
会場位置がわかりにくいため、担当者の助言で案内用のA4ポスターを5、6枚あちこちに貼った 
アクセス:
神戸駅から、2駅ほどの移動が必要 

個展を終えて:会場利用者の視点から総合評価

高名な建築家による斬新さが売りでもある美術館で、実際、その景観と内部空間は素晴らしいです。ただ、展示会場利用者の側からすると、すでに述べた通り、複雑な内部構造がかえって会場を見つけにくいし、可動壁の利用が有料だというのも他の美術館では無かったことで、同じ期間に隣同士で利用した方々と割り勘清算しました。
この美術館を展示室として利用できたことはとても名誉なことですが、また利用するには、残念ながら、マイナス要素が多すぎると思われます。
なお、当時の担当者Fさんにはあらゆる疑問点に根気良くご回答下さり、大変にお世話になったことをここであらためて述べておきます。

あくまで会場利用という視点で、A B C の総合評価をつけるなら、

 総合評:B- 

広報用B2ポスター