Happy New Ear! サウンドアーティスト 鈴木昭男という
以前の記事「同期しない音楽を求めて ~ 坂本龍一:晩年の試みと環境音楽について」で、うっかり言い忘れていた重要人物について語ります
2年前に録画していて、1年後にやっと見たNHK-BS プレミアムカフェ ' 和あるど 和の音' という番組、初回放送年度は2005年。テーマは、西洋音楽とは違う日本の伝統音楽、そして和楽器の独特な特徴をさまざまな角度から追求してゆく構成で、近年稀にみる面白さとワクワクする発見があり、そして最後に、「あっ!」と驚かされました・・・
和楽器にまつわる、さまざまな角度からの実証や分析が終わり、番組はこれで終わりかなと思っていたら、画面に「終章」と文字が浮かび上がります、
「まだ、何かあるんだ?」と思って、画面を見つめていると、いよいよ、「その人」の登場となったのです・・・・
その人、登場
京都府、日本海に面した丹後地方の海岸沿いにある家屋が映し出され、案内役の女優が、「鈴木さん」と声をかけると、中から、とても柔和な面立ちの
男性が現れます。私は、スズキ、と聞いた瞬間、「あの人」のことしか思い浮かびませんでした・・・
・・・とても懐かしい人、私が80年代の学生時代にさまざまなサウンドを求めて音楽アルバムをレンタルや購入などして聞き漁っていた時、なかでも格別に不思議な音作りだったので、Book offに捨てきれずに今日まで持ち続けけてきたLPアルバム、それは;
New sense pf Hearing 鈴木昭男 1979年
再び、番組に戻ります
鈴木氏と案内役の女優が屋外に移動して、糸電話のような形状の、スプリングコイルでつながれた金属製の筒ふたつをお互いが持ち、鈴木さんが何か筒の中につぶやいたり揺れ動かしたりすると、まことに玄妙不可思議な音が響き渡り、女優は童心にかえったように目を輝かせて驚いています!
私も聞いていて全く同じ気持ちになりました。おそらく、人間が楽器という形状で出せる音ではないのです、といって、自然界に生じている音でもなく、つまり、説明できないので、実際に耳で感じるしかない音なのです。
次に鈴木さんは、グラスハープと紹介される、細長く透明なガラス管をいくつか並べたものを擦って、精妙かつ清澄な響きを奏でます。
部屋に戻ると、布で幾重にも大事そうに包まれた中から、「石笛(いわぶえ)」と称される物体を鈴木さんは取り出し、やさしく穏やかに語ります、「古代人が吹いていた笛です・・・ぼくらの先祖よりぼくらは、風の音を言葉に翻訳しているのです・・」
画面は変わり、海岸沿いの巨大な洞窟へと移動します。鈴木さんは、毎日ここで石笛を吹いていると言われ、腰かけるとおもむろに吹き始め、番組は終焉してゆきます。
素足で歩き、素手で触るような音作り
番組を通じて、和楽器というものの独自性を再認識させられるとともに、古来、日本という国は、自然と融け合う想いを大事にして、それを音にして奏でることをこころがけてきたのだな、と感じました。
そして、鈴木さんがなされているユニークな試みは、そういう日本古来からの音楽的土壌の上をしなやかに素足で歩き、指一本一本でそっと感触を味わいながら、音の無限な響きと可能性を子供のような無邪気さと好奇心で愉しんでおられる、そのような印象を受けました。素晴らしい方です!
追記1:
鈴木昭男さんの音をお聞きになりたいなら、以下のサイトへどうぞ!
鈴木氏のHPを閲覧すると、この創作楽器「アナラポス」の音 sound を4種類、試聴できますので、ぜひ一度お聴きくださいませ。
https://www.akiosuzuki.com/works/sound/
追記2:
YouTube では、さまざまな動画がアップされていますが、短い映像なら以下です;
サウンド・アートの先駆者・鈴木昭男の紹介動画
朝日新聞デジタルより 45秒ほど
Akio Suzuki on the Noise Train 1
乗客のいる電車の中でのパフォーマンス映像 3分46秒ほど
AKIO SUZUKI ANALAPOS
ニューヨークのどこかの展示会場の映像 2分17秒ほど