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夏休みの読書感想文はこの本で決まり!~おすすめ小説3本~

夏休みで好きだった時間、朝から部活をして、午後に友達と遊ぶ前に、一回家に帰ってテレビを見ながら昼飯を食べている時間
学生の皆さん、楽しい夏休みが始まりましたね。

しかし、おもいっきり休みを満喫したくても、夏休みの宿題が残っていてはもやもやしてしまい、自由研究は何にしようか、読書感想文は何を書こうかと悩むこともあると思います。

本が好きな人は本屋に行って何を読むか考えている時間が楽しいと思うはずですが、そんな時間はもったいない!と思う人もいるでしょう。

かくいう私も中学生や高校生時代は本をあまり読まない人間でした。
なので、今回は僕が読書感想文におすすめの本3冊を紹介するので悩んでいる人はそれを読んで、さっさと感想文を書いてしまいましょう。

中学生~高校生向けの本を選んでいます。
そもそも今も読書感想文ってあるのか……?という疑問はありますが単純なおすすめ本紹介と思っていただければ幸いです。

朝井 リョウ『星やどりの声』

朝井リョウさんの作品は高校生~大人向けの作品が多いイメージで、深堀されたキャラクター達の濃密で少しドロドロとした人間関係の交わりが作品の魅力です。
この作品は6人の兄弟姉妹に焦点を当てた家族の話で作者の魅力も残しながら、青春を謳歌している若者中心の日常描写が身近に感じられるので、比較的どの世代も楽しめる作品になっています。

作者が大学最後の夏に書いた作品ということで、読めばその才能を存分に感じられ、朝井リョウさんの他の作品も気になることでしょう。

物語は海が見える町にある喫茶店『星やどり』を舞台に、父親を亡くした家族がそれぞれの父親に対する想いや、自身の将来に対して希望を抱き、時に苦悩しながら成長する群像劇となっています。

各章ごとに兄弟姉妹1人1人の計6人、おおきくて大学生の長男、ちいさくて小学生の三男と各世代の登場人物たちの成長が等身大の視点で描かれているため、読者の近い年齢の登場人物で感想を書いたり、単純に共感してしまった登場人物で感想を書けばすらすら書けると思います。
しかも1章あたり均等に50Pくらいにまとめられているため、読書が苦手な人も1日1章と決めておけば、読破できます。

父親が残した『星やどり』というお店のレガシーと家族への想い、子ども達は父親の想いをどう継いでいくのか。
しかし、時には父親が抱いている子どもにはこうなって欲しいという想いは枷に感じてしまいます。
自分の人生は自分だけのもので、大事なのは生きている人がどう歩んでいくかどうかです。
精神的な独り立ち、人の想いからの離脱というのもテーマになっており、自分で人生を選択することの大切さを教えてくれる物語になっています。

登場人物が送っている生活の描写がとにかく解像度高く、食事風景、学校での友達の会話、移動中の風景といった表現描写はもちろん、心理描写も繊細で描写が鮮明にイメージできると思います。

また、この本を読むうえで是非意識して欲しいことがあります。
それは『色』です。

文章を読んでいると、この作品において様々な色が直接的にも間接的にも表現されています。描写にリアリティが感じられるのは色の表現が多く使われている所以だと考えます。
僕は特に『白』が印象的だと感じました。

はじまりも”まっさなら牛乳が~”から始まります。
しかし、対照的な黒も多く出てきたり、常連の『ブラウンおじさん』と呼ばれているお客さんが『星やどり』に来店しなくなってしまったことが物語のターニングポイントとなることから、読む人によって印象的な色が変わると思うので、自分の印象に残った色を読書感想文に綴っていけば、作文が華やかになること間違いなし!

終盤に判明する『星やどり』というお店の名前の秘密も、物語のミステリー要素として見事なので楽しんで読んでください。

恩田 陸『チョコレートコスモス』

恩田陸さんの作品は読書感想文に向ている作品が多いです。
『夜のピクニック』や『蜜蜂と遠雷』それに『ネバーランド』どれも非常に素晴らしい作品です。
その中で僕が特におすすめするのが『チョコレートコスモス』

伝説の映画プロデューサーが企画した舞台のメインキャストという、選ばれた者しか立つことが許されない場所をかけて行われるオーディションで、壮絶な戦いが繰り広げられる作品です。
ジャンルでいうとこれはもうバトル物といってもいいくらい熱く、役者を夢見る登場人物たちの個性がぶつかり合います。
メインキャラクターは女性がですが、あまりの熱さに男性も釘付けになる作品だと思います。

メインキャラクターは旬の女優と呼び声高い東響子と突如として現れた新星、佐々木飛鳥という対照的な2人です。

大物映画プロデューサーが新作の舞台を企画している頃、そのメインキャスト候補として無名の新人女優、佐々木飛鳥がオーディションに招かれます。
対して、有名にもかかわらずそのオーディションに声がかからなかった東響子はその采配に納得がいかず直談判を兼ねてオーディションの視察に向かいます。

実はプロデューサーの2人の女優にもう一段役者としての高みを目指してもらうための大きな野望が含まれていました。

天才がぶつかりあい、2人が演技を通して心を通わせる場面はまさに激熱、エンタメ作品として非常に面白い。

東響子は子役時代から芸能界で活躍しており、芸能界を生き抜くために誰よりも努力を重ね、とにかく仕事に対してストイック。
周りからの評価も高いものの、技量に限界を感じていて、ゆるやかに知名度と自信が下がっていきます。
オーディションに呼ばれなかったり、試練を課される響子ですが、決して舞台から逃げない姿がとにかくかっこいい。

一方、佐々木飛鳥は大学の演劇サークルに所属していましたが、とある脚本家の目にとまったことからプロの劇団に入り、オーディションという名の戦いに踏み出します。
彼女の武器はどんな些細な挙動や仕草を見逃さず、人の動きをそのままトレースでき、まるで影のような演技をするところ。

飛鳥の天才的で自然な演技をしている表現が物語の最初に描かれていて、とにかくそれが衝撃的で、文章力の高さが感じられます。

この物語の特にすごいところはオーディション場面の表現方法です。
オーディションシーンは演じている役者視点だけでなく、その場に立ち会っている舞台関係者が視点にもなるため、自分がそのオーディションを見ているかのような臨場感が味わえ、演者がどう演じているか、どんなところが凄いのか分かり、自分も演劇について詳しくなったような錯覚になります。
また、視点が変わることが多いのですがその移行がかなりスムーズなので、親切だと思います。

オーディションの課題も、役を普通に演じることを要求されるのではなく、直前に無理難題とも思われる条件が言い渡され、エチュードのような即興力も試されていきます。参加者はその試練の意図を考え、どう乗り越えていくのかも見どころの1つです。
特に飛鳥の発想はプロには思いつかないような奇想天外な発想をして仕掛けてくるので非常に面白い。

単純に物語の熱さを語るのもよし、オーディションに挑む参加者がこのステージに立つまでどんな人生を歩み、舞台を夢見たのかに焦点を当てて書くのもよし、興奮と感動の演劇ロマンストーリーです。

この本を選ぶ前に一つだけ注意点、500P以上ありかなりボリューミー

相沢 沙呼『小説の神様』

作者はミステリー賞を総なめにした『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を書いた人であります。
この作品はミステリーではなく小説を書く2人の高校生が主役の王道青春ストーリーです。

主人公の千谷一也は高校生ながら千谷一夜というペンネームで小説家として活動しています。
一度新人賞を受賞するものの、それから発表した作品は良い評判とはいかず、ネットを見れば自信をなくす日々、そして売り上げも振るわず、新作のプロット構成に足踏みしており、物語を紡ぐ意味を見失っていました。

そんな時、通っている高校に同年代の小説家であり、自分よりもずっと人気がある不動詩凪というペンネームで活躍している小余綾詩凪が転校してきたことを知り、出会います。

それから、一也の担当している編集者から詩凪と一緒に作品を創ってみないかと持ち掛けられ、共作することになり、プロットは詩凪が、文は一也が作ることになります。
自信をなくした一也と、多彩な想像力と卓越したシナリオで評判上々、自信もある詩凪の相性は最悪、だけど一緒に物語をつくっていくことでぶつかり合いながらもそれぞれの悩みが共鳴して、2人にしか作れない物語を作り上げます。

また、起承転結がはっきりとしていてストーリーラインがつかみやすい作品で、ごく普通のやれやれ系の主人公と頭脳明晰・容姿端麗・運動神経抜群のヒロインが出会うという物語の設定や相反するキャラクター同士のかけあいはライトノベルっぽく非常に読みやすいです。

あまり本を読まない人がこの本を読んだら「出版業界ってこんなに大変なのか」「物語を生み出すことはこんなに苦しいものなのか」と驚くかもしれません。しかし、同時に物語を生み出して読者の心を動かすために、厳しい業界で魂を削り戦う2人に感動することでしょう。

この本は紹介した本の中では唯一、一人称視点で描かれておりの視点主の一也くんの自信のなさに少しフラストレーションがたまってしまうかもしれませんが、一度共感してしまえば楽しめると思います。

また、この作品の特徴として「……」や「――」など描写に余韻を作る表現が多く出てきて(特に後半)その余韻が読書のテンポと非常に合うと思います。

そして、タイトルにもなっている『小説の神様』
僕は読む前は大げさなタイトルだなと思ってしまいましたが、確かに物語の中に『小説の神様』を感じることが出来ます。宗教的な意味ではないです。

物語に登場するキャラクターが持っている「願い」という要素、これは作者自身が「願い」を持っているからこそ生まれるものであり、この願いが様々なものに変換されて、読者を震わせる。

それが物語の真髄だと、僕は読んでいて思いました。
この本を読んで少しでも読書に興味を持ってもらえればうれしいです。

読書感想文におすすめの本3作品を紹介しました。
ちなみに、以前記事で書いた辻村深月さんの『この夏の星を見る』もめちゃくちゃおすすめです!



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