詩 【 異口同音 】
ちがうと思っていたことをちがうと言い放ったのち
ここでふと ちがうことがちがわなくなったことに わたしは気付く
なにもちがわないのだ われわれは相手を否定するといった点において
たった今 同一の存在となったのだ と
そのような講釈を相手に言い なにもなかったかのように なにもちがわなかった点を詫びるのだが
相手は憤慨し さらにまた激しくそれを否定にかかった
その否定こそ わたしはちがうと言い放つのだったが
さらにまた輪をひろげて その上から相手は 次々に否定の言葉を浴びせかけてくる
こんなはずじゃなかった
わたしは不意に哀しくなり 絶望してからだじゅうの力が抜け
うな垂れ 膝を折り ぼろぼろ泣き崩れるのだった
20101127