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あだっす マークII

我が施設のレッドデータアニマル。
…そんな彼は進化を遂げていた。

稟議が通らない、怒りを買いやすい挨拶…

おいっすー

そんな、おいっすーの使い手、小石川。

私が連休に入っている間に彼はレベルを上げていた。

ポケモンでいうと、リザードがリザードンになるように。また、ピカチュウがかみなりの石を使ってライチュウになるように。

そして、スーパー戦隊でいうと…最近のレッドが強いフォームを身につけた時のように。

彼は自信と輝きを手に入れ

おっすー小石川

…へ、進化を遂げていた。

おっすー小石川(Level:35)

⭐︎習得技
①低い声
②見下ろし強面
③おっすー(進化と共に、おいっすーは忘れてしまった)
④直立listen

不協和音モンスターズ攻略バイブルより、一部抜粋

そして、彼のスターテスは確実に向上していた。
…特に攻撃力が。

更に彼は捲し立てるという特殊能力まで身につけていた。

捲し立て(威力65)
※おいっすーの威力が40なので、ざっと1.5倍の威力。

効果→相手の怒りダメージを与え、さらに相手を混乱状態にする。

不協和音モンスター攻略バイブルより、一部抜粋

昨日、私が公休だった日に事件が起こった。

おっすー小石川は壊れた炊飯器の稟議で施設長の元を訪れていたとの事。

「おっす!施設長。」
もはや、おっすーでも無い挨拶。
″オラ悟空″とでも続けたかったのか?と言わんとした舐め方でスタートした戦。

施設長の右隣には185㎝の小石川が反り立っていた。

「ここは学校じゃ無いんだよ、小石川くん。」

「おっす!すいません施設長。」
「ただ、学校はどうでも良いんで、釜、米を炊く釜が壊れたんですよ。」

…釜?
…あんたはおっすー、、、雄だろう…笑

というのは冗談で(笑)

「パッと見、もう壊れてそうで。もともと買った時から型が古かったというか…。」

その日は珍しく小石川が施設長を攻め立てていたらしい。

まるで、レベル上げが成功して浮かれてボスに挑むchildren。

「他に炊く方法も無いっすし、これじゃ皆んなご飯食べられなくなっちゃうすからねぇ。電源入ったり切れたりしてたら、全然美味しくないでしょ?良いやつ買ってくださいよ。」

我が施設の長は、もうすぐ80歳の超えの人生の大先輩である。

そう、部活中に水を飲むな!世代をしっかり生きてこられた方。

反り立つ壁の先端を鋭い眼光で見上げる施設長は、全盛期のミスターSASUKEこと山田勝己に見えた。

「小石川くんなぁ…。近いんだよ…まず。」


そこっ!?

「あとなぁ、ネチネチとなぁ…。」

その日出た超軟飯みたいに?笑

「小石川くん、元々和食屋で働いてたんだろ?そういう時はなぁ、まずは鍋で焚いてみろ!」

ん!?

施設長はおっすーの圧力でこんらんしてしまった…。
鍋だけに…笑

その後、向日葵がに揺られる光に誘われて、二人の姿が見られたのは入居者さんのおやつタイム後の施設農園。

事務員のお姉様から見た二人は課外授業の打ち合わせ中の校長先生と新人の先生だったそうだ。

「っすー施設長。これでかいキュウリっすね。」

「いや、小石川くん…それズッキーニだよ!」


………彼は本当に料理人だったのか?


勤務後に修理用キッドを事務所から持ち出していった小石川。

そう、、、。彼の稟議はまた通らなかった。

夕方のゲリラ豪雨の先を見つめる小石川。
その先には壊れた炊飯器で炊いたご飯同様、ねちょねちょな畑が広がっていたのだったとさ。

※この話で出てくる名前は全て仮名です。
また、炊飯器とミキサーは担当が小石川から若手バーテンダー志望の小森へ変更。後日、無事に一発で通りました。笑

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