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【説教集×英語学習6】 優劣を思わない #216

2024年1月21日(顕現後第3主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p224.

It shall make us not to advance ourselves before our neighbour, to despise him for that he hath fewer gifts, …  

「受けている賜物が自分よりも少ないとして隣人を軽蔑し、自分のほうが隣人よりも優れているなどと思ってはいけません。」(第二説教集17章2部:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

わたしたちはどうしても自分と他人を比べてしまいます。自分と他人を比べるというのは実は意味のないことだとよく考えれば気づけるはずであるのに、つい比べてしまいます。「人間」という生き物の性であるということなのでしょうか。

あの人は自分よりもあれができる、これができる。あの人は自分よりも多く持っている。そうして、自分のほうが「劣っている」と結論づけてしまうことがあります。また一方で、自分はあの人よりもあれができる、これができる。自分はあの人よりも多く持っていると、自分のほうが「優れている」と思ってしまうこともあります。そうして意図してかしないでか「マウントをとる」ということをしてしまうことがあります。

そもそも優劣を思うところに間違いがあります。十全な人はおらず、誰しも仮にある点で他人より多く持っているとしても、他の点ではそうではないからです。不遜に陥らないように謙虚でありましょう。「わたしたちは多くいてもひとつ」であると告白することの大切さと、それを大きな愛で包んでくださっている方を思う毎日を送りましょう。


英文の解説

主語は文頭の It 、ただしこれは形式主語で、真主語は to despise 以下です。この to despise の前にあるカンマは現代英語ではほとんどお目にかからないカンマで、でもこの説教集にはたびたび見られるものです。おそらく音読の上での読点としての機能を強く持つものでしょう。

文頭の It に始まる構成は、It が主語であるとして、述語動詞は shall make 、目的語は us 、補語が not to advance です。shall という助動詞は、現代では will と似たような「未来」や「意思」の意味でとられがちですが、一方で should の現在形であり、解釈する際には should の持ついわゆる「~するべき」「~するはず」のニュアンスも考える必要があります。ここではむしろ should に近いものとして和訳を施しました。

make は使役動詞として用いられる際、補語には原形不定詞(動詞の原形)を置くものとされていますが、古い英語では to 不定詞がそこに置かれています。というよりは、そもそもは to 不定詞を置くのが正しい用法であったものが、時代の変遷のなかで to が落ちていって現在に至っているようです。するとこの文の最初のところは「それはわたしたちに advance させないようにしているはずだ」という直訳になります。

補語である to advance の目的語は ourselves で「自分の地位を高くする」となり、before our neighbour の before は位置関係を示す「~の前で」ではなく順序や階級に関わる「~よりも」の意味で、ここは「隣人よりも」となります。なお、neighbour はイギリスらしい綴りであることに加え、our neibhours となっていないのは、具体的な隣人ではなく、「隣人」という存在あるいは概念を指しているからでしょう。したがって not to advance 以下は「自分を隣人よりも上にあるとしない」という意味になります。

したがって前半部分の意味は「それが私たちに自分を隣人よりも上にあると思わないようにさせているはずだ」という意味になります。これをもとにして和訳を施しました。

真主語の to despise の目的語は him 、すなわち our neighbour で「隣人を蔑む」という意味になります。それに続く for that は「~という理由で」の意味になります。for が「~のため」という理由を表す前置詞で、この前置詞 for の目的語が that 以下の節です。 このように、前置詞の目的語に that 節を用いるというのは、現代ではあまり見かけません。

その節のなか、he hath fewer gifts ですが、he が指すのは our neighbour、比較級 fewer を用いているのは後に than us または than we have が省かれているためと考えられます。for that と合わせると、「彼(=隣人)が(私たちより)賜物を少なく持っている(=いただいている)からといって」という意味になります。

英文の見取り図


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