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クイーンビートルの不正

■ 別途“マル秘資料”を作成。浸水は隠し通すつもりだった

 JR九州高速船が保有している船体は「クイーンビートル」1隻、1日1往復のみ。運休すれば、会社の収入は途絶える。予備の船を持たない「1隻体制」であるが故のムリな運航が、結果的に「不正検査」といった事態を引き起こしたと言わざるを得ない。

 2024年2月にクラックと浸水を確認する以前にも、クイーンビートルは同様の事態で運休を余儀なくされ、現場はキャンセルに憤る予約客への対応に追われたという。第三者委員会の報告書によると、経営陣は「ようやく再開にこぎ着けたクイーンビートルの運航停止は避けたい」との思いがあり、「まずは(九州運輸局への)第一報」というルールに違反することは承知のうえで、報告をせず運航を継続したという

 さらに、前年の浸水発生時には作成していた「船体・機関故障報告書」「船体損傷報告書」を作成せず(かわりに「マル秘」と書かれた記録簿を作成)、社長以下幹部も「隠し通すつもりであった」そうだ。

 しかし浸水量が徐々に増えたため、4月10日からは「マル秘帳簿」の記載単位を、バケツによる「○リットル」から、「○cm」表記に変更。打ち合わせでも役員の「もう少しガマンして、浸水状況の経過観察の継続をお願いしたい」という話があり、5月第3週ごろまでは10cm程度だったという。

 その後、27日夜を境に50cm以上の浸水量を記録するようになり、浸水を検知する警報装置が鳴動する恐れが出てきた。翌28日朝に運航管理者代理の指示によって、部下がボルトを外して「警報装置の高さ付け替え」が実行された。しかし、30日には浸水が90cmに達し、結束バンドで通常より50cmも高い場所に固定していた警報装置は鳴動。船内の制御システム「マリン・リンク」に鳴動の記録が残るため、隠ぺいをあきらめて、ようやく九州運輸局への報告を決断した。

 当時の社長は一連の報告を事前に受けており、「特段異を唱えることなく位置変更を了承した」とのこと。また事の重大性は幹部も認識しており、次のドッグ入渠を6月上旬に前倒ししたうえで「1週間程度は警報装置を作動させずに運航しよう」という思いから警報装置付け替えを指示したものの、結局3日間しか持たなかったのだ。

 その後も幹部は九州運輸局に虚偽の事実を伝え、110cmものクラックを一目見た検査官が「急にこんなに大きく割れるのか?」と質問しても、「兆候はなかった」と回答。警報装置も元の位置に付け直していたという。その後、8月の抜き打ち検査では国交省海事局の職員が厳しく追求、ようやく“自白”にいたった。

■ 第三者委の報告書は極端な低評価。違和感の中身は?

 以上が、第三者委員会による「クイーンビートル」浸水隠ぺいに対する報告だ。しかし、第三者委員会の透明性を検証する「第三者委員会報告書格付け委員会」(弁護士・法学者・ジャーナリストなどで構成)は2024年12月27日に評価結果を報告。9人の委員のうち7人が「D」評価(4段階のもっとも下)、2人が「F」評価(Dの下で「評価に値しない」)という結果であった。

 その理由は「(親会社である)JR九州への忖度が見られる」こと。第三者委員会調査には、以下のような文言がある。

「JR九州からJR九州高速船へ運航継続のプレッシャーが事案を生じさせたという見方は短絡的に過ぎ、当委員会としてはそこに原因があったとは考えていない」

「1台体制で代用船なく運航に当たっていたことは、本調査の対象とはしていない」
(いずれも要約)

 格付け委員会では、第三者委が肝心な事象を「そこに原因があったとは考えていない」「本調査の対象とはしていない」として済ませてしまったことを問題視した。なお、今回と同様に「D」「F」評価が相次いだ事例は「SOMPOホールディングスの自動車保険不正請求」(中古車販売店の不正絡みで発覚。2024年)、「日産の完成車検査不正」(2018年)、「朝日新聞社の慰安婦報道問題」(2015年)など、めったにない。

 クイーンビートルの諸問題は、報告書によると「福岡海上保安部による捜査(刑事捜査)継続中」であり、JR九州が事業撤退を決断したところでまだ追及は続くだろう。いずれにせよ、このあとの推移を見守りたい。

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【ササピー】

ようやく深い部分にメスが入ってきた。
このJR九州の体質は、なんなんだろう?
とても公共交通を担っている会社とは思えないし、やって来たことは、犯罪である。
なぜ、逮捕されないんだ?
海上保安部の厳しい判断を待ちたい。

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ササピー
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