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手話通訳士試験を受けてきた。言い訳を書いておくと,直前に締め切りが立て込んでいて(1週間に大小合わせて3本の原稿を〆た。重なるときは重なる),日本手話モードに頭を切り替える余裕がまるでなかった。しかも締め切りというのは意思決定力のリソースをかなり食い,そのあと単純作業でもしにくいときた。というわけで,勉強は若いときにしろというのは大事である(意思決定をしていると疲れて勉強する気にならない)。直前に某教材をやってみて「OKOK,できるやつはできる」と確認した程度であった。あと手
福島大学の入試の国語の問題にこの本「しゃべるヒト」に書いたチャプター「語用論」が使われて、オンラインで公開されている。 福島大学過去問題(令和6年の国語) 実際のところ、問題が難しくてびっくりした。高校生にこれを解かせるのか。言語学の授業のレポート課題みたいだ。 私の書いたものは、「一般向けに語用論ってこういう現象を説明するものだよ〜」という例示ばかりだった。 例えば、娘がお餅が食べたいときに「Fちゃんおもちすき」といっていた。落語の「まんじゅう怖い」と逆だ。どっちも
手話の認知科学研究史を概観し、展望を書いて欲しいという割と無茶な(?)要望に応えるべく、22ページの原稿を書きました。 この本、以下のような目次構成なので、言語発達や言語の教育について知りたい方には大変有用です。 私のチャプターは10節構成。(22ページなのに多いな) 試し読みで読めるこのチャプターの紹介文 とのことです。 私の裏テーマは、この執筆依頼が来た頃に亡くなられたとうかがった栃木聾学校の田上隆司先生(聾学校に手話を取り戻した人(対応手話だけど))トリビュー
待ちに待った本が出版されて、本をいただいてしまった。 「ろう通訳」つまり、手話通訳をろう者がやる、聴者の通訳者とセットで協力してやるという「新しい手話通訳のかたち」について、基本的な事項を網羅した本だ。 東京のオリパラのときに話題になったEテレの「手話の人」が「ろう通訳」だった。とてもバズっていたTwitterの投稿はこちら。 ろう通訳とワタクシ 私も最近「ろう通訳」については書いていて、もうすぐ出版されるので(その前段階のとっちらかった発表資料はここに置いてある)、
長屋さんの言語学書紹介がおもしろかったので,私も手話に関する本を少し整理してみました。 各見出しの一番上が基本図書,それを読んでから次に進むみたいな感じで行くと良いかなと思います。 手話の研究を知る 手話言語学のはじまり,そしてギャローデット大学で起こった「デフ・プレジデント・ナウ」という公民権運動について,つまりアメリカ手話話者の自己決定権を得るための運動に繋がるストーリーを読むことができる。 (世界的な著者であるオリバー・サックスのストーリーテリング能力が遺憾なく発
ドラマ「デフ・ヴォイス」が終わり、祭りのあと。いろいろ思うところはあるが、気を取り直して、「文化の盗用」でなく「社会問題の提起」を選んでくれたNHKドラマ制作陣に感謝したい。そして、手話指導の米内山陽子さん(コーダ)のnoteがとてもよくて。もう何回も読んでいる・ 舞台のひとつとなっている手話通訳学科の社会学の先生としては、ある程度この「文化の盗用」については授業のネタ帳がある(私は社会学者じゃなく言語学者のはずなんだが…) 「当事者による表象」への道については、IGBの
前回からの続き。 合理的配慮の義務化という急ピッチな展開 もうこの4月から、合理的配慮はどんな事業者に対しても義務化します。といって、いろいろな発信が行われている。「努力義務」だと「努力はしました〜」で終わるから実効性がないことが問題視されてきたのだ。さらにいうと「過重負担」もやらない理由になるので、問題視されている。 とはいえ、事業者側に立てば、過重負担の記述がなければ、際限なく対応を迫られるという恐怖があるだろう。 そもそも当初から、当事者団体は「努力義務」みたい
実は、情報保障については、公的な支援として、「意思疎通支援」という制度がありますが、これは生活に必要なものに限られます。病院への通院や、子の学校PTA、役場での手続きなど。これは障害者総合支援法の地域生活支援事業というくくりで行われます。この「意思疎通支援」は「公的派遣」と呼ばれており、自己負担ゼロで派遣してもらえます。 ただし、定期的に学校に通ったり職場に行ったりすることには使えないところが多いです。職場での情報保障は、障害者雇用促進法でまかなわれます。 イベントの主催
結構前に買っていたけれども、さらっと見て放置していた本。夏の出張の時にも言及されたので読まなきゃ読まなきゃと思っていて、つい後回しになっていた。とはいえ、必要なのでようやく読んだ。 タイトルの「3000万語の格差」というのは、この人がやった研究ではなく、ハートとリズリーという研究者が、乳幼児期の子どもの家庭に定期的に記録を取りに行ってみて、親が専門職、普通、貧困(ただし定期的に家に行けるくらいには安定している)で、上位と下位で子どもが聞いている語彙数の差が3000万語くらい
京都大学は故郷である。「第二の故郷」とかじゃなくて、故郷だと心身が認識しているようだった。実家に帰って充電する人がいるように、大学に足を踏み入れた途端に身体が軽くなったような気がした。指導教官が「タカシマさんは、目をつぶっても構内を歩けるよな」と言っていたが、いつも通っていたキャンパスの木々が大きくなっているのをひとつひとつ、かみしめるように確かめて歩いた。 寝ながら書く予稿集 学会発表は、割と勢いで出したのだが、保育士試験のこともあり、保育士試験のあとになぜか持ち時間2
手話通訳付き対面発表覚え書きが割と好評だったのでオンラインのやつも書いておく。 1. 通訳者を選定前回、通訳の選定が何より大事という元も子もないことを一応最後に書いたけど、オンライン会議の場合、通訳者の環境は通訳者が整えるしかないので、オンライン会議をやり慣れている人にお願いするのがいいです。 オンライン会議? やったことないけど、どうしてもというなら対応しますよ、という人にお願いすると、 画面からはみ出る 音声が聞き取りにくい スポットライトの方法がわからない
今年もやってきました、まつーら先生主催のアドベントカレンダー「言語学な人々」2023です。「言語学な」話をどうしようと思いましたが、そういえば昨日の「日本手話は顔めっちゃうごくやつです」みたいな解説は言語学ベースでした(かなりかみ砕いてますが)。興味がある方は是非。 今年は、「言語学な」があっという間に埋まったので、別館(言語学なるひとびと)もあります。 去年もドラマの話を書いているから、ドラマばかり見ていると思われているかも知れませんが、去年のあれ以来、見たドラマと言え
プレゼンテーションを構成するのが、なんだか最近とみに苦手だと思っている。所属機関に言語学者はほぼいないので、言語学の細かい話はしない。畢竟、政策系の話になる。特に、所属部を移って以降、言語政策っぽい話とか、発達支援の話とかのほうが、「わかりやすい話」になるのだろうと思っている。聞き手が誰かによって話すことが変わる。当然といえば当然だけど、これがかなり難しい。そういうわけで、去年の10月末の日本語学会のシンポジウムでの発表を最近ふいに褒めてもらったのを、暗闇の中の灯として、気合
学会会場の設備の問題が今回はなかったけど、久々の対面会場発表だったので、手話通訳も入るときの流れで自分が気をつけていることを書いておく 待ち合わせ場所と打ち合わせ場所 接続確認 照明調整 ろう者の座る位置と手話通訳の立ち位置 音響調整 通訳打ち合わせ 1.待ち合わせ場所・打ち合わせ場所 行ったことのない会場だと、どこで待ち合わせにするのか、打ち合わせはどこにするのか、で結構迷う。特に季節が暑いとか寒いとかの苛烈な時期だと、外で待ち合わせにしてしまうと、仕事前に