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某所のポスドク手話/言語学研究者。子が1人夫が1人。こちらには長めの文章を書いたものを…

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某所のポスドク手話/言語学研究者。子が1人夫が1人。こちらには長めの文章を書いたものをとりあえず集めておきます。 最近の研究については→https://researchmap.jp/yufuko/

マガジン

  • 日がな一日言語学

    認知言語学者の日常的ことば遊び場的ななにか

  • 丸山正樹/デフ・ヴォイス考察

    2023年12月にNHKドラマ化された丸山正樹(2011)「デフ・ヴォイス」についての考察など

  • 博士の異常に○○な子育て

    とある先輩に、FBに書いていた子供の観察を「博士の異常に冷静な子育て記」といわれたのですが、冷静であるよりは親ばかであるように自身では感じている。 ぼちぼち記録を残していこうと思ってまとめようとしてはいるのだが、そんなに暇じゃないのでありました。

  • ニューメキシコ滞在記 with 1歳児

    砂漠の都市、メキシコ国境のアメリカ、アルバカーキ滞在記。

最近の記事

「虎に翼」ラスト2週

本当に久しぶりに朝ドラを通しで見ている。 まず、このドラマは「出来事」中心であって、脚本自体は人物の感情描写にはほとんど労力を割いておらず、役者のうまさでいい絵が成り立っているだけだという理解をしなければならない、という理解に至った。これは「鬼滅の刃」が流行ったときに言われていたことと似ていて、あの人数であの物語の規模を23巻ぽっちで終わらせられたのは「見せ場だけ絵が描いてある」「あとはナレーション」みたいな作劇だったからのようだ。これにとても似ていると思う。 この物語を

    • [終わる/かまわない]→「そろそろよろしいでしょうか」を説明しろという問題

      福島大学の入試の国語の問題にこの本「しゃべるヒト」に書いたチャプター「語用論」が使われて、オンラインで公開されている。 福島大学過去問題(令和6年の国語) 実際のところ、問題が難しくてびっくりした。高校生にこれを解かせるのか。言語学の授業のレポート課題みたいだ。 私の書いたものは、「一般向けに語用論ってこういう現象を説明するものだよ〜」という例示ばかりだった。 例えば、娘がお餅が食べたいときに「Fちゃんおもちすき」といっていた。落語の「まんじゅう怖い」と逆だ。どっちも

      • 「手話の認知科学」In「ことばと学び」朝倉書店 でました

        手話の認知科学研究史を概観し、展望を書いて欲しいという割と無茶な(?)要望に応えるべく、22ページの原稿を書きました。 この本、以下のような目次構成なので、言語発達や言語の教育について知りたい方には大変有用です。 私のチャプターは10節構成。(22ページなのに多いな) 試し読みで読めるこのチャプターの紹介文 とのことです。 私の裏テーマは、この執筆依頼が来た頃に亡くなられたとうかがった栃木聾学校の田上隆司先生(聾学校に手話を取り戻した人(対応手話だけど))トリビュー

        • テクノロジー読書(術)

          Audibleの購読を止めた。なんか疲れ果てていたからだ。アホみたいに情報を頭に入れる中毒者みたいな私だが、読書が趣味だったところから、「読書は仕事」になったときからあまり紙媒体の読書が自由時間でできなくなっていた。だから「なぜ本が読めない」本を買ってみたが、余り参考になることは書いてなかった。Audibleを惰性で聞くのはよろしくない。ただ、ためになったと思った何冊かは結局紙の本も買って、改めて目を通した。 本業で「読む」について、数年前から論文を音読してくれるサービスが

        「虎に翼」ラスト2週

        マガジン

        • 日がな一日言語学
          28本
        • 丸山正樹/デフ・ヴォイス考察
          7本
        • 博士の異常に○○な子育て
          28本
        • ニューメキシコ滞在記 with 1歳児
          15本

        記事

          ろう通訳とワタクシ: 木村晴美編著(2024)「ろう通訳ってなに?」

          待ちに待った本が出版されて、本をいただいてしまった。 「ろう通訳」つまり、手話通訳をろう者がやる、聴者の通訳者とセットで協力してやるという「新しい手話通訳のかたち」について、基本的な事項を網羅した本だ。 東京のオリパラのときに話題になったEテレの「手話の人」が「ろう通訳」だった。とてもバズっていたTwitterの投稿はこちら。 ろう通訳とワタクシ 私も最近「ろう通訳」については書いていて、もうすぐ出版されるので(その前段階のとっちらかった発表資料はここに置いてある)、

          ろう通訳とワタクシ: 木村晴美編著(2024)「ろう通訳ってなに?」

          コンビニで買える元気

          今夏は暑すぎる。はやくも7月1日に出勤したときに熱中症気味になってしまい、今年はその前にちょっと疲労でぐったりしていた期間を含んでおり、もうダメだと腹をくくって(?)エアコンの中から極力出ないという体調管理をしている。いろいろ諦めて「慌てない」とやっている。慌てないという割にはいろいろやってはいる夏ではあるが、おかげで体調を崩さずにお盆を乗り切った。これはもう、電気・エアコン・文明サマサマである。 そういうわけで、日が暮れて涼しくなってから、ようやく外に出る。子は昼間は留守

          コンビニで買える元気

          アンチ「手話通訳不要論」のツイートまとめ

          先日、突如「手話通訳不要論」という投稿がたくさんまわってきた。手話関係者が怒っている。あまりにも安直な手話に対する偏見を大量に並べる投稿が悪趣味だった。私も結構ツイートを投げていたので(試験前後の興奮で)一応まとめておこう。自分の分を。 この「日本語字幕を見てもわからない人は文盲」については、そもそも、そうした文盲、つまり非識字者のことを無視してきた歴史があり、今も日本語リテラシー関係に手話関係者の姿は見えないのは悲しいことだ(知ってたら教えて欲しい)。 厚労省の障害者の

          アンチ「手話通訳不要論」のツイートまとめ

          手話通訳士試験の筆記の受験

          手話通訳士試験を受けてきた。社会事業大学、清瀬駅よりバス10分。7月28日。この死にそうに暑い(deadly hotという表現をアメリカで習ったがまさにそれ)時期になぜ我々は、駅前ではなく、バスの本数も多くない路線のあちらまで行って試験を受けなければならないのだろうか。保育士試験の東京外国語大学は、駅から徒歩ですぐだった。ありがたかった。真夏のこうした試験は、せめて駅前にある会場をなんとかして借りて欲しい。死なないで行って帰ってくるだけで精一杯だった。 バス停で、ものすごい

          手話通訳士試験の筆記の受験

          爺の集まりに紅一点 第14週

          #虎に翼 木曜日、トラチャンがキレた 割と情緒が忙しいドラマで、複数のストーリーが並行して走っているので、「え、どうしてそうなった?」ってシーンが多い。そういうときはTwitter(X)でカンニングする。そうすると「男社会で怒りたくても瞬発力が足りなくて怒れなかった人たちがトラチャンを応援している図」がわかる。 そうだ、なぜか「女性が渡した方がいいから」と花束贈呈役に若い女性が任命されがちで、そこでの対応は、どんな感情を持っていようが「スンッ」で済ませてきた「私たち」を

          爺の集まりに紅一点 第14週

          政見放送への手話アバター活用?

          政見放送で手話通訳者に狼藉を働く輩の映像が流れてきていろいろ落ち着かない日々である。とりあえず、舞台装置の中に中年女性を立たせると、笑いのネタにしようとする輩があとを絶たないことはわかった。 手話関係者になってからというもの、こうやって手話通訳がおちょくられたりするたびに怒ってきた。怒るのは疲れる。とりあえずどうしたら事態が改善するだろう? と思ってつぶやいてたら微妙にバズってるので記録しとこう。 屈強な男性通訳者に抑止効果はあるか そこでまず考えたのは、中年・壮年女性

          政見放送への手話アバター活用?

          岡部えつ(2024)怖いトモダチ —本当に怖いのは、自分かもしれない

          #読書記録 ウェブ漫画連載の方を読んでて、原作小説があるじゃん、と急に気づいて、先日思い立って購入して、一気に読んだ。 旧友がオンラインサロンで成功しているのを発見してしまい、関係者を追いかけるという話。インタビューで聞いたことという体裁+追いかけている旧友が書いたブログ記事という構成で、「認知のゆがみ」あるいは「認識のズレ」を浮かび上がらせる。この人を人として見ていない旧友が、一体どのように自分の都合の良いように世界を、人を解釈しているのか、わかってくるとゾッとする。そ

          岡部えつ(2024)怖いトモダチ —本当に怖いのは、自分かもしれない

          疲労は脳の炎症? 心の疲れをとる技術

          ブルーバックスの本がAudibleに入っていたので早速読んだ。とはいえ、早回しでさっくり聞いただけなので、そこまで詳しく理解したわけではない。 疲労の物理的な機序はなにか→脳の炎症だ ウィルスとそれに感染しやすい遺伝型の相互作用で鬱病になりやすい人がいる 疲れると発症する 動き回っても炎症はよくならない、安静に こんな感じだろうか。COVID-19の後遺症と疲労・鬱の関連性を論じているので、詳しい説明はブルーバックスの本だなーって感じではあるのだけど、お医者さんは、

          疲労は脳の炎症? 心の疲れをとる技術

          女の連帯の物語 #寅に翼 第13週 第62話

          今日は、梅子さんとトラちゃんが”ちゃんと”再会。常に、包み込むように、年下の友人たちに大上段に構えるのではなく、むしろ「一緒に勉強してくれてありがとう」とおむすびをたくさん作ってくれ、「嫌な態度をとってしまってごめんなさい」と頭を下げてくれるいい人なんだった。良いとこのお嫁さんだけあって、人柄も良し。息子たちも器量よし…イケメン揃いじゃん。でも彼女の人柄の良さを引き継いだのは三男だけという悲劇。 猪爪家の寅子の兄弟、甥っ子たちと同じように、裕福な家で育ったろうに、お父さんの

          女の連帯の物語 #寅に翼 第13週 第62話

          花江ちゃんの「ウフフ」とナンパされるおばあちゃんの思い出 #虎に翼 第13週 第61話

          今日のエピソードでは、戦争孤児で、寿司屋で住み込みで働くことになった道男が、なぜか猪爪家に帰ってきて、食卓を囲んでいた。寅子は呼び捨て、花江は「花江ちゃん」呼びで、「俺みたいな色男が来たら花江ちゃんもうれしいよな」とちょっと不穏なことを言う。これに花江は「ウフフ」なのだ。え、なんか気持ち悪ーい。何これ。 ちょっとSNSでみんなの感想を読んでると、既にできてるだの、道男が受け入れられていて冗談で流せるようになっててよかったねだの、なんとなくどれもしっくりこない。「ウフフ」って

          花江ちゃんの「ウフフ」とナンパされるおばあちゃんの思い出 #虎に翼 第13週 第61話

          三宅香帆 2024 「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」集英社新書

          #読書記録 タイトルが良い本。つい読みたくなるよね。本を読んで生きてきたのに、スマホばかり見てしまう自分。どうしたら「本がまた読めるようになるのか?」と考えることはある。 かくいう私も、物語は殆ど活字で読めない。Audibleのプランに入っていて、自己啓発本だの、憲法だの、新書の類いを聞き流しだの、既読の村上春樹を「声が良いわ〜」とかいいながらのんびり聞いていたりするのが私の読書になった。 とはいえ、本を読むのは仕事なので、専門書は日英問わず大量に読んでいる。文系研究者

          三宅香帆 2024 「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」集英社新書

          翼を持つ人、持たぬ人 #虎に翼 第12週

          「虎に翼」を見るためにNHKオンデマンドにお金を払った。4月はそれどころじゃなくて、5月の途中からしか見てなくて、しかし、最初の方見たい! ってなっちゃったのだ。 「虎に翼」はタイトル通り、「鬼に金棒」みたいな、ただでさえ強い「虎」が、木の上の獲物まで得られるようになる「翼」をも持っているというようなタイトルである。つまり、寅子は、もともと強い。そして他の虎が持たない「翼」も持っている。その翼がなんなのか、というのが徐々に明らかになってきたなあと思いながら見ている。 今週

          翼を持つ人、持たぬ人 #虎に翼 第12週