寿長生?読めねえよ 成瀬が教えてくれない大津観光案内 ⑧
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歩いて楽しい川辺
せっかく石山寺まで来たのなら、瀬田川のほとりを歩いて満喫しよう。瀬田川ぐるりさんぽ道は、全長8.2kmにわたって散策路が整備されている。しかも、自転車で散策路を走れるので、石山駅でレンタサイクルを駆って1周するのもいいだろう。瀬田川周辺はほぼ平坦なので、電動アシストがなくても心配ない。健脚ならちょうどいいウォーキングコースになる。歩き疲れたらバスで戻ろう。また、なぎさ公園からさんぽ道まで歩いて行くのも楽しいだろう。
瀬田川ぐるりさんぽ道
さんぽ道の区間については、各部に分かれたマップに沿って案内していこう。
部分マップ
石山駅から瀬田の唐橋までは、1kmちょっとだ。歩いて行くも良し、京阪電車・バスの唐橋前で下りるも良し。この界隈は第④回で案内済みなので、そちらをご覧いただきたい。
左岸にあたる夕照の道は、石山寺の対岸辺りでしばらく散策路が途切れているので注意が必要だ。しかし、この通りには素敵なカフェが何軒かある。
JAレーク滋賀 グリーンファーム石山店では、地元の農産物や惣菜などが販売されている。
からはし味噌(豆味噌)がお薦め。
海無し県にも美味しい寿司屋がある。ハイシーズンで混雑したランチタイムには、南郷の飲食店に行くのが賢い。
左岸に見える小山は大日山といって、瀬田川に突き出していたために、瀬田川の流れが阻害され洪水を起こすこともあった。明治期に一部をダイナマイトで爆破した結果、瀬田川の水の流量が4倍ほど増えたという。
大昔に行基も大日山の掘削を検討したが、下流の氾濫を恐れて断念したそうな。瀬田の唐橋が落ちた場合に、大日山の浅瀬を歩いて瀬田川を渡ることができたのも、大日山が近代まで掘削されなかった理由だ。この滋賀県で一番低い山の頂きには、大日如来を祀った大日堂が佇む。瀬田川ぐるりさんぽ道の南端折り返し地点は瀬田川洗堰で、洗堰の上には2車線道路が走っている。
瀬田川ぐるりさんぽ道 散策路マップ↓
(上のリンクをご覧になれない場合は、下の「アクア琵琶」のサイトから、PDFをダウンロードできます。)
琵琶湖の水止めたろか
滋賀県民が、両府民を相手に凄む時にこのフレーズを使うというが、これまでに耳にしたことは一度もない。琵琶湖の水を止めるには、瀬田川洗堰を全閉する必要がある。全閉したら困るのは滋賀県で、以前の豪雨で琵琶湖河川事務所が洗堰を全閉操作して、滋賀県知事が不満を漏らしたのは周知の事実である。全閉し続けたら滋賀県が水浸しになるからな。
南郷洗堰の遺構
瀬田川洗堰が昭和36年に竣工するまでは、100m上流にある南郷洗堰が稼働していた。明治時代に造られたにしては大がかりな堰だったが、堰を閉じるにはヒノキの角材を人力で落とし込む必要があり、全閉操作には丸二日を要したという。現在の瀬田川洗堰はもちろん電動である。南郷洗堰は土木推奨遺産に選ばれており、両岸に堰の一部が残存している。
毎月第4土曜の午後に洗堰が開放され、投げ銭形式でカフェが営まれる。
無駄にオサレな看守場も現存する。
アクア琵琶
淀川水系の治水・利水に関して学べる学習施設だが、親子連れならずとも初めて知ることが多くて驚くはずだ。淀川水系には、下流では淀川に呼び名を変える瀬田川はもちろんのこと、琵琶湖や琵琶湖に注ぎ込む川も含まれる。
雨たいけん室では、豪雨を疑似体験できる。
南郷水産センター
アクア琵琶のほとんど向かいにある。
釣り堀もある魚のテーマパークだが、昔はジェットコースターもあったという。小学生以下の子供連れにはいい所だろう。
実は隠れた桜の名所でもある。
米原市の醒井養鱒場もそうだが、滋賀県の水産施設は昭和感が漂う。醒井養鱒場にいたっては、明治初期に開場した施設で、150年近くの歴史がある。
都市部に近いのに漂う秘境感
瀬田川洗堰を過ぎると、瀬田川はその姿を徐々に変える。緑は濃く深く、川の流れは速く荒くなっていく。
マップ
岩間寺
正法寺は、京都府境の小高い岩間山にあるので、岩間寺と通称される。最寄りのバス停からはたっぷり1時間近くも歩かないといけない。岩間寺までの山道は勾配がキツく急カーブなので、運転に自信がない方にはお勧めしない。汗かき観音として地域の信仰を集めるが、岩間寺の見どころは何といっても大銀杏の黄葉だ。
今年(2024年)10月20日(日)は、ぼけ封じ祈願会ほうろく灸が開催される。
ほうろく灸(2000円、予約不要、入山料別途)を受ける方に限って、石山駅からシャトルバスでの送迎がある。今年5月に開催された時の案内がこちら↓で、今回も内容は同じだ。
帰りのルートで下ろしてもらえるのは内緒だよ。公共交通機関利用の方は、アクセスが不便な岩間寺に行くチャンスだ。
岩間寺は、西国三十三所第十二番札所で、岩間寺までなかなか行く機会がない方は、西国巡礼のバスツアーに参加するのも一案だ。岩間寺、石山寺、三井寺を、日帰りで回るツアーが、多くの旅行会社から販売されている。
例年秋には、山粧う夜参りが行われ、境内がライトアップされる。
立木観音
厄除け観音として有名で、1月から2月には大いに賑わう。山に霊木を見つけた弘法大師(空海)が瀬田川を渡れずに困っていたところ、鹿の背に乗せられて川を跳び越えた。根がある立木のままの霊木に観音像を刻んだ。その時に42才の厄年だったので、厄除け観音として信仰を集めることになった。
しかし、この寺に行くには長い石段を登らねばならぬ。その数は800段を超える。私でも、瀬田川ぐるりさんぽ道を1周した直後に登れたから、そこまで気に病むことはない。
辿り着いた境内はオアシスのようでもあり、無料でいただけるお茶は命を吹き込んでくれる。
無理せずに休み休み上るが良い。
立木音楽堂
クラシックの生演奏が聴ける小さなホールを持つカフェ。
見よ!店内ホールからの眺めを。
クラシックの演奏がない時でも、この眺めだけで行く価値がある店だ。
鹿跳渓谷・佐久奈度神社
立木音楽堂から引き返し、鹿飛橋を渡ろう。既に石がゴロゴロした荒々しい景色に変わっているのに気づくだろう。ほぼ直角の逆L時型にカーブするので、急流が岩肌を削って、荒々しくも美しい姿に変わった。なぜ鹿跳渓谷というのかは、立木観音の項に書いたとおり、空海を乗せた鹿が跳んで渡ったからと言い伝えられる。
鹿跳渓谷の本当の見どころは、岩が侵食されてできた甌穴なので、佐久奈度神社から川辺に下りてみるといい。
佐久奈度神社は古式ゆかしい格の高い神社だが、水害を避けるために移設されたので、現在の社殿はコンクリート造りで、画像を掲げるのも気が引ける。
ちょっと離れたところに御旅所が現存するが、これも移築されたらしい。
寿長生の郷
たねやのラ・コリーナ近江八幡よりも遙か以前に、叶匠壽庵は桃源郷を開墾していた。寿長生の郷がオープンしてから来年でもう40年になる。滋賀県和菓子界の両雄は、ともに全国の百貨店に販路を広げた。その間も大津が拠点の叶匠壽庵と近江八幡が拠点のたねやは、互いの縄張りを荒らすことはしなかったのである。しかし、第①回に書いたように、たねやは大津湖岸なぎさ公園にラーゴ大津を来春オープンさせる予定だ。たねやは叶匠壽庵のお膝元に出店することで宣戦布告したわけだ。
話が逸れた。和菓子業者が理想の環境を求めて、広大な苑地を拓いて、訪れる客の心を和ませつつ、商品を販売する構想は、寿長生の郷をもって初めて実現したと言えるのではなかろうか。
滋賀県を訪れる方の多くがラ・コリーナに立ち寄るが、既に行った方はぜひ寿長生の郷にも行ってみてほしい。ラ・コリーナとの違いを一言で要約するなら、寿長生の郷は販売棟から苑内の木々まで、和風を基本としていることだ。
和菓子のお薦めは代表銘菓のあもだ。
苑内には販売コーナーだけでなく、Bakery&Café野坐などのカフェもあり、朝食まで食べられる。
ヤギもいるから遊ぼうぜ。
苑内の面積は石山寺の約2倍にあたる6万3千坪ほどで、3万7千坪ほどのラ・コリーナよりも広い。自然観察しながら隅々まで回ると2時間はかかるだろう。広い梅苑を有し、石山寺とともに梅の名所としても知られる。
大津南部の日帰りモデルコース
公共交通機関利用
・ 膳所駅→ときめき坂(徒歩7分)→義仲寺(9時開門から9時半前)※ 9時以前に膳所駅に到着できる場合
・ 9:45 JR膳所駅乗車石山駅下車
・ 10:05 石山駅から寿長生の郷シャmトルバス
・ 13:30 シャトルバスの帰り便(乗車前に下ろしてもらう地点を申告)
A → 立木観音前下車(お好みで、南郷洗堰・アクア琵琶・南郷水産センターや、石山寺直行でも) → 立木観音拝観 → 14:48 京阪バス立木観音前乗車 → 15:00 石山寺山門前下車 → 石山寺拝観
B → (瀬田川・琵琶湖クルーズ運航日に限る)石山寺山門前下車 → 14:00発 瀬田川・琵琶湖クルーズ(第4便)乗船 → 石山寺拝観
※ どちらも効率重視のやや駆け足スケジュール。どれかを省いて時間を気にせずに、瀬田の唐橋や建部大社に寄るのも一案だ。
参考までに、2014年には滋賀県知事嘉田由紀子と大津市長越直美(ともに前職)が、「第1回 女子たび 恋に効くおおつ -女子力アップ大作戦-」と銘打って、全国唯一の女性ツートップによる大津市の観光プロモーションを行った。
寿長生の郷で和菓子作り体験(2014年当時)をして、石山寺で新月のお届け弁当を食べるプランだ。
嘉田が直後に3選を断念したことや、プレスおよびSEO対策のまずさもあって、このプロモーションは全く話題にならず一回限りに終わった。しかし、公募によって選ばれたプランということもあり、大津ファンの私から見てもなかなかツボを押さえている内容だ。一般観光客ならもう1箇所は足を伸ばせるだろう。
マイカー利用
この機会に公共交通機関では行きづらい岩間寺に行っておきたい。まず石山寺を拝観して門前で昼食をとったら岩間寺へ。その後はお好みで。
次回は、わたくし御丹珍が、なぜ大津を愛するようになったかを語る。
マガジン
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