見出し画像

【簡単あらすじ】育休刑事・諸事情により育休延長中(微ネタバレ)【似鳥鶏/角川文庫】


『 拝命します!』


一年間の育児休暇を取得し、息子の蓮と悪戦苦闘中の秋月春風
お風呂に入れたり、買い物に出かけたり。

一見すると普通のお父さんだが、春風の職場は、凶悪犯と闘う「県警捜査一課」だった…

前作に引き続き、育児休暇中なのに何故か事件に巻き込まれる、闘うお父さんのお話し。



『はじめに』
ついに秋に突入したことで最高気温が30℃を超えることもなくなり、読書が捗る時期になっており、私だけでなく読書好きとしては大変嬉しい時期ではないでしょうか。
今の時期は、自室でも外出先でも読書が出来るという大変良いシチュエーションを得られますので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

本作も前作と同様、育休をとっている(はずの)春風が、何故か息子の蓮とともに事件を捜査し、解決するという四編の短編集です。

1.世界最大の「不可能」

某整形外科に空き巣が侵入した。その手口や状況から、元事務員が容疑者として浮かび上がる。しかし、その元事務員には生後十か月の赤ちゃんがおり、それを考慮すると、空き巣をするための二時間程度の空き時間を作ることが出来るとは思えなかったが…

2.徒歩でカーチェイス

身代金目的の略取事件が発生した。被害者は社長の孫で生後十一か月の赤ちゃん。犯人は分かっていたが、今、どこに犯人と赤ちゃんがいるかは分からない。一方、春風はある事情から見知らぬ土地で、蓮をベビーカーに乗せ散歩をしていた。その途中で寄った公園で、気になる母親と赤ちゃんを見つけ、ベビーカーを押しながら尾行することになる。

3.あの人は嘘をついている

春風と沙樹、二人の共通の後輩であり、大恋愛で結婚した夫婦。しかし、春風には夫から・沙樹には妻から、同時に「あの人は嘘をついているから尋問してくれ」という連絡が来る。
その理由の一端となる友人から「時間差で会っただけだから、どちらも嘘をついてないよ」と言われたが、詳しく調べるとまた違った一面が見えてきて…

4.父親刑事

大手ゼネコン勤務の会社員が自宅で殺された。
しかし、犯行現場にある電子ロックの記録からは、犯人はどのように侵入したのかが分からなく、さらに犯人と思われる人間には、鉄壁のアリバイもあった。


ーーー

県警本部捜査一課・第七強硬犯に所属する、秋月春風巡査部長。
妻・沙樹
は、キャリア組であり捜査一課長である上司。
姉・吉野涼子は、某大学の准教授であり、法医学教室所属であり警察の検視も度々手伝う。
息子・蓮は、人見知りしないムチムチの赤ん坊。

という家族構成の秋月家。

秋月夫妻は、県警本部捜査一課という特殊な職場であっても、普通の公務員が出来るような育休を取得し、普通の公務員のように育休後に職場に戻ることを目指しています。

しかし、トラブルを招く体質の姉のせいか、それとも「昼飯にも手錠と警棒を持っていき」、「365日24時間働く」ほどの仕事人間である直属の上司・石蕗係長に呼び出されるためか、世間一般的な「育休」とは違った日常を送ることになる。

前作に引き続き、育休中の秋月春風巡査部長を中心としたお話しです。

赤ちゃんの存在が犯人のアリバイを補強し、トリック遂行の一部になる。しかし、犯人特定の決め手にもなる。という構成が好きですが、今作は、特に最後の「父親刑事」が良かったです。

事件の難易度と、県警本部捜査一課という特殊な職場においての、異物となってしまった秋月刑事の奮闘と、その結末はとても身に染みるものでした。

個人的な考えでも私の業務的にも、こういった男性(父親)の育児休暇がテーマになるのは、小説だけになるような世の中になって欲しいものです。

ーーー
★同作者の他作品レビュー★



★他の小説レビュー★


いいなと思ったら応援しよう!

P206 - 人財教育/人事労務コンサルタント -
記事を読んで頂いた方に、何かしらのプラスを届けたいと考えています。