【簡単あらすじ】合理的にあり得ない・上水流涼子の解明(微ネタバレ)【柚木裕子/講談社文庫】
弁護士・上水流涼子は、ある事件により弁護士資格をはく奪されてしまう。
涼子はその後、助手・貴山とともに探偵業を始める。
彼女の事務所には、「経営コンサルタント」「霊能力者」などを名乗る欲にまみれた詐欺師が絡む難題が次々と舞い込む。
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本作品では、才色兼備の上水流涼子らが、世にはびこる悪を圧倒的に叩きのめす爽快感が味わえます。
1.確率的にあり得ない
ある経営コンサルタントと契約を結ぼうとしている建設会社社長。
秘書は詐欺師ではないかと怪しむが、奇跡としか言えない出来事を目の当たりにする。
ボートレースで六連続的中させるからくりとは何か。
2.合理的にあり得ない
余生を優雅に過ごす男。
妻に秘密があると疑い問いただすと、霊能力者となった涼子から石や皿・壺を購入したと言う。
3.戦術的にあり得ない
暴力団組織の会長から、ある将棋の対局で絶対に勝たせろという依頼を受ける。
元東大将棋部主将の肩書を持つ助手・貴山は、相手がある不正を行っている可能性に気づく。
4.心情的にあり得ない
涼子が法曹資格を失う原因を作った、巨大グループ企業社長から「大学生の孫娘と連絡が取れなくなった」という依頼を受ける。
涼子は、依頼を解決しなおかつ遺恨も晴らさせてもらうと決意する。
5.心理的にあり得ない
自殺した父親は野球とばくをしていたかもしれない、女性はそう語った。
そして野球とばくの負け分が原因の一つとも。
そして、野球とばくの関係者に復讐したいと依頼する。
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私は、題名にもなっている「合理的にあり得ない」の話がお気に入りです。
登場人物の心情が案件の原因に関わる話なのにも関わらず、それを解消するために、涼子はいちいち合理的に行動します。
涼子が、依頼者に対して行った仕掛け。
ある人物の言動や考え方。
どちらについても、題名通り『合理的にあり得ない』と当てはまるまとめ方がとても爽やかでした。
他の話は、助手である貴山の存在感が大きいため、涼子の活躍を一番楽しめる話と言えます。
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助手の貴山は、「元役者・東大卒でIQ140・将棋アマチュア五段・紅茶コーヒーカクテルの入れ方がプロ級・裏世界とのつながりもある」という能力を所持しています。
多くの場面で、この能力が役に立つ(所持していない場合には、成り立たない解決方法も…)ことになります。
ある意味、ここまで有能過ぎるスペックを持つ貴山こそ『合理的にあり得ない』と言える存在なのかもしれません。
ただ、涼子だけでなく、このスペックをもった貴山がいるからこそ、勧善懲悪のような形で問題を解決し、爽快感を味わえる作品になっています。
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