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【小説レビュー】鈴木ごっこ(微ネタバレ)【木下半太/幻冬舎文庫】

「今日から、お前たちは鈴木として暮らしてもらう」

巨額の借金を抱えた男女四人が、ある豪邸に集められた。
彼らは一年間、鈴木として暮らす。
つまり「家族ごっこ」をしなくてはならない。
ある程度生活に慣れてきた四人だったが、三か月後、貸主から次の命令が下り…

『はじめに』
季節が変わり、読書の秋ではないですが、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたいのですが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』がありますので、その点にご注意ください。

多額の借金を背負い、その返済のために豪邸に集められた、見ず知らずの男女四人の一年間を描写した作品です。


1人目.父親の会社が倒産し父親は失踪。母親は入院し、姉が風俗で返済する。というのを防ぐために身代わりとなった、名古屋の大学生ダン
2人目.共同経営をしていた親友が運営資金を持って失踪。自身も借金をしてしまった福岡の中年男カツじい
3人目.夫が出会い系で出会った若い女性を孕ませてしまい、その女性がある会長の孫。その慰謝料と迷惑料を支払うことになってしまった、大阪のカフェ料理人小梅
4人目.婚約者の裏切りと弟との関係が上手く行かず、弁護士事務所を休職、反動でキャバクラに湯水のごとく金をつぎ込んでしまった、北海道のスーツ男タケシ

この4人が中心となり、第一話から第四話まで、各人の過去や借金をしなくてはいけなかった事情を混ぜつつ話が進んでいきます。

正直なところ、「多額の借金を背負った人物が、その返済のために一年間家族ごっこをする。」という設定や、日常生活の表現の細かなニュアンスについて等、ちょっと現実離れしているというか、ご都合主義というか、様々なことについて初めから違和感を感じていたのですが、第五話:たらこのカルボナーラで、この生活についての全てが分かると、違和感も解消しとても楽しめました。

どのようにして4人が借金を返済するのかという方法は、皆さんも昔から知っているような少し古い方法と思いましたが、多額の借金を返すために集められた四人という背景があるにも関わらず、何で普通の生活(むしろ普通の人よりも、心身ともに健康な生活)を送ることが出来たのか。ということと最終的につながり、納得の読了感です。

(自分の力でどうにも出来ない)借金はダメ!絶対!



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