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【簡単あらすじ】夏と花火と私の死体(微ネタバレ)【乙一/集英社文庫】


―これで私の悪い癖とも別れることができるかな…


ここは、ある夏のある小さな村。
そこに住むある兄妹が「私」の死体を隠そうとする話です。
兄はいくら賢いとはいえ、そこは小学生。
様々な困難が襲い掛かります。

無邪気な子どもたちの、悪意が薄まった言動が逆に怖さを増幅させます。



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『はじめに』
今年は暖冬と言われていますが、突然雪が降ったりポカポカ陽気になったりと、体調を崩しやすい日が続いております。しかし、部屋で読書に勤しむことはそういった外の気候が全く関係ありませんので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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乙一さん。

JOJOを題材にした小説関連からホラーまで、幅広いジャンルを執筆している作者さんという印象を持っていましたが、本作がデビュー作で、執筆時はなんと16歳とのことです。

私も国語の先生をしていたりもするので、「多くのページを使って優れた作品を執筆する」ということも素晴らしいのですが、「出来るだけ少ないページで優れた作品を執筆する」ということの難しさはとてもよく分かります。

ページ数は、わずか143ページしかないのですが、その短いページに作品の視点(主人公)を殺されてしまった私に置いたり、少ないページながら、夏の日の描写や子供たちの心情を丁寧に書いていたり。

さらに必要な伏線については、きっちり記載されていますので、薄っぺらさを感じさせるような作品ではありません。

そして、起承転結も詰め込まれている、基本にも忠実なミステリ作品です。

以前レビューしました、アムリタ新装版と同じくらい、構成力が凄いと思います。


この作品を執筆したのが16歳のデビュー作と考えると、解説の小野さんも仰っているように、かなりの衝撃を受ける内容です。

後半に掲載されている「優子」も、さらにページ数は少ないのですが、果たして「何が(誰が)正しく・間違っているのか」ということを中心に、読み進めるごとに展開が変化し・入れ替わるというスピード感溢れる作品で、私はお気に入りです。

全体的に読みやすく文体が私に合っていると感じましたので、別作品も読んでみたいと思わせる作者さんでした。



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