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Resu
2015年3月23日 06:09
春彼岸に訪れた、午後の墓地。 天候には恵まれていたけれど、人の数はまばらだった。 線香の匂いが漂う中を歩いていると、小さな女の子がひとり、サンドイッチを食べていた。 ストライプ柄のレジャーシートに座り込んで、ふたの開いた魔法瓶からは湯気が出ている。 場所が墓前であることさえ考えなければ、ピクニックのようだった。 私は自分の用事をすませてから、依然としてランチを続ける女の子に
2015年3月16日 23:56
「日曜どこいこっかー」 学校の帰り道。 マスクの中で口をもごもごさせているユイは、ただ喋っているだけではないことを、私は知っている。 花粉症シーズンはアレルギー持ちの人にとって辛く苦しいものだけど、彼女はそうじゃなくて風邪でもなんでもなかった。 いや、なんでもないことはない。 ユイは、花粉を食べているのだ。 もともとはそんな特殊な体質の子じゃなかった。 二年前、ユイは風邪
2015年3月5日 03:53
「なんか、心が折れちゃった」「どっち方向に?」「え?」「右? 左?」「どっちでもいいでしょ。なんでそんなこと聞くの」「反対方向に折りなおしたら戻るかと思って」「そんなことしても折り目は残るし」「残るか」「残るの」「残り物には福が」「ない」「しっかり折れてるねえ、心」「折れてるんだよ」「よし、そんな君にいい言葉を授ける」「なに」「折れるような物質的な心なんかいらない!」
2015年3月1日 22:02
物事が明るみに出て、表ざたになり、具体性を帯びて実害を生みだすのは、量の問題だ。 あなたが毎日寝ている布団にも、実はこんなにダニや埃が! とか、何気なく使っている日用品のあれこれに、実はこんな汚れが! とかは、通販番組でよく目にする光景だけれど、ああいうのも、事実を知るまではそれまでの状態が通常で、量が減ったことを実感することがあったとしても、知らないままであれば、「あるなし」は問題にならな