心折設計

「なんか、心が折れちゃった」
「どっち方向に?」
「え?」
「右? 左?」
「どっちでもいいでしょ。なんでそんなこと聞くの」
「反対方向に折りなおしたら戻るかと思って」
「そんなことしても折り目は残るし」
「残るか」
「残るの」
「残り物には福が」
「ない」
「しっかり折れてるねえ、心」
「折れてるんだよ」
「よし、そんな君にいい言葉を授ける」
「なに」
「折れるような物質的な心なんかいらない!」
「……んー?」
「ピンと来ないか」
「うん」
「折れたわー心」
「いや簡単に折れすぎでしょ」
「直ったわー心」
「おちょくってんの?」
「その心は?」
「折れてます」
「まだだめかー」
「ずっと折れ続けるよ。この世の終わりまでね」
「それはそれで強固な心だなあ」
「なんでさっきから原因聞かないの?」
「あ、聞いてほしかったんだ」
「いやもう折れてるからいいけど」
「折れてることは譲らないその折れない心は見習わないといけないね」
「やっぱ馬鹿にしてんでしょ」
「おれおれ詐欺ならぬ折れ折れ詐欺ってどうかな」
「なに言ってるかわかんないし」
「『折』を『祈』に変えてみると「心が祈れた」ってなって、なんか神秘的じゃない?」
「あーもういい、やめようこの話」
「やっと折れてくれたか」
「性根が折れ曲がってる誰かさんのおかげでね」

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