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積み上げては崩す、嫌になる。

 なんだか泣けてくる。

 昨日、俺は他者がコツコツと積み上げた努力をぶっ壊したからだ。

 未来のために頑張っている誰かの行動を台無しにした。それも一瞬にして。

 あまりに虚しいことだ。

 はぁ……😢

 具体的には作りかけの蜂の巣をぶっ壊したんだ。

 うん。

 昨日、事務所の倉庫で電話をしていた。ぼんやりと正面を見ていたのだが、視線の先の棚に見慣れないブローチのようなものが貼り付いているのを発見した。

 何かと思ったら蜂が運んできた泥の塊をコンクリートブロックでできた棚にペタペタと貼り付けて、巣を作っている最中だった。

蜂が飛び去ったあとの写真

 見事なもので、陶芸家のごとくこねた泥を少しずつ盛り付けて巣の外壁を形成している最中だった。序盤の基礎の部分を作っているようであった。

こんな感じでね。

 新しい泥玉を伸ばしている最中であったが、俺に気がついてどこかへ飛んで行った。

 繰り返すが、見事なものだ。

 ここからどんなビジョンを描いているのかは知らないが、図面もなく、設備もなくゼロから住居を作るなんてあっぱれだ。

 何よりその手間がすごい。見ればわかる通り、働き蜂が1度に運べる量なんてたかが知れている。鼻クソ1個程度だ。おそらく自分の体重以上のそれを気が遠くなるほど往復して作り上げていくのだろう。俺は彼女の献身に感動した。

 一通り感動した後にブチ壊した。

 俺は彼女の努力の結晶を根本から刮ぎ落として粉々にしてゴミ箱に捨て、元の場所には殺虫剤をブチ撒けた。

 まだ序盤だから。

 まだ子供が住んでいないから。

 働き蜂自体は死んでいないから。

 色々と頭に言い訳を浮かべながら、全てを台無しにした。

 ほどなくして蜂が戻ってきた。

 あれ?ない?ない!と言わんばかりに辺りを飛び回る。

 ないに決まっている。先程俺が全部破壊し尽くしたのだから。お前の家は俺が跡形もなく壊してゴミ箱に捨てた。

 殺虫剤が舞っている中で作りかけの巣を探す。

 よく見ると彼女は新しい泥を抱えていた。

 作りかけの巣なんてどこにもないのに泥を抱えて跡地を探し回る。

 そして諦めたのか、泥を抱えたままどこかへ飛び去っていった。

 きっと他所で作り直すから。

 この蜂を殺したわけではないから

 事務所に蜂の巣ができたら危ないから。


 なんだかわからないが俺は心底嫌になった。正しい行いをしたのだがすげえ嫌な気分だ。

 どちらの価値が重いのだろう。

 おしまい


 タイトルはGalileo Galileiの青い栞からの引用だけど最後にこんな曲を紹介しておこう。

 ハチ繋がりでフリッパーズギターからHAPPY LIKE A HONEYBEEだ。

 オールドスクール?なポップロックに小山田圭吾のカタカナ発音が映えてとってもイノセントだ。この男の過去の雑誌インタビューの真偽や、素行について触れる気はないし、語っていた内容が事実なら俺には一切擁護できないが、生まれた作品には罪がないことを信じている。犯罪者の子供は犯罪者にならないことを信じているし願っている。

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