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捨てられた永○園の浮世絵カードはどこへ行ったの?

 永谷○のお茶漬けを買うたびについてくる綺麗なカード。日本古来の色鮮やかな芸術、浮世絵がプリントされた小さなカード。

 葛飾北斎だっけ?歌川広重だっけ?どんな名画家の手によって描かれたかは知らないが、雄大な海の情景や、江戸で暮らす人々の力強い姿を見事に切り取った版画たち。それは8Kモニターにも描写できない”時代の空気”を落とし込んだ、かつての日本の栄えある姿の記録だ。

 国内外を問わず評価され、受け継がれてきた美しき宝物が、なんとお茶漬けのパックを買うだけでついてくるのだ。


 いらない。

 このカードは絵葉書にするには小さすぎるし、保存してコレクションするには絵の周りの枠や字が邪魔だ。シールじゃないからポケモンパンのシールみたいに筆箱や水筒には貼れないし、中途半端にデカくて硬いから栞にもならない。

 どう頑張っても開封した瞬間ゴミになる。

 誰も求めてないのに無差別にポストへ投函される水道業者のマグネットですら、給食の献立や時間割りを冷蔵庫に貼り付けるのに役に立つ。浮世絵カードには真似できない芸当だ。


 人はいつ死ぬと思う…?

 心臓を銃で撃ち抜かれた時…… 違う。

 不治の病に犯された時…… 違う。

 猛毒キノコのスープを飲んだ時…… 違う!!!  

 …美しいと感じるものを自ら否定する時さ…!!!

 そんな拷問のような苦しみを、○谷園は我々がお茶漬けのパックを開けるたびに味あわせてくる。"我が国の誇らしい芸術をゴミとして捨てるという屈辱的な行為"を何度も強制されるのだ。味あわせるのは茶漬けだけにしてくれ。

 ただお茶漬けが食べたいだけなのに、なぜこんな仕打ちを受けなければならないのか。私はこのカードを捨てる時は必ず古紙として、リサイクルゴミとして扱う。美しい浮世絵を、パッケージを開けて即座に燃えるゴミにブチ込むのはどうしても心苦しいからだ。

 どうして完成品にわざわざゴミを追加するのか、製造過程でどうしても廃棄物が出てしまうのはわかる。だがこのケースはわざわざ廃棄部分を追加している。そもそも昔はついてなかったし。

 このカードはディズニーリゾートのフードメニューである”骨付きソーセージ”の骨によく似た存在だ。アレは腸詰めであるソーセージに元々骨なんかついていないのにわざわざ追加している。売れた瞬間ゴミになることを前提に付けている。

 ただあの骨は直接手で持って食べる場合は取っ手の役割を担う。漫画に出てくる骨付き肉のような要領だ。だが浮世絵カードは取っ手にはならない。お茶漬けは手掴みで食べないからだ。

 また、カードの裏面を確認してみると、毎月抽選で1000名にフルセット、つまり55枚この拷問カードを送りつけるというキャンペーンを実施しているらしい。

 ご好評につき延長しており、2025年1月31日が期限だ。延長しているのは応募者が誰一人いないからだろう。血迷って応募してしまう誰かが現れない限り、このキャンペーンは永遠に続く。その間にも全国の家庭でフルセット何組分にも相当する枚数の浮世絵カードが捨てられてゆく。

 勇敢な侍よ、キャンペーンに応募し、この負の連鎖を止めてくれないか。

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