【指揮者メモ】「transcendent 超越した」と「transcendental 超越的な」の区別
【transcendenTとtranscendenTAL】
「transcendent 超越した」と「transcendental 超越的な」は厳密には区別があり、前者は神など経験を超えた事象に対して使用する形容詞で、それ以外は後者。
しかし区別を付けず使用されることが多い。リストの「超絶技巧練習曲」は英訳だと The Transcendental Etudesになるが、原題の仏語はÉtudes d'exécution transcendante。演奏は経験可能だから英訳の方が厳密だ。
transcendental philosophy (超越論的哲学)を言い出したのがカントで、定義の一つは「経験がどのようにして可能になるか探るべく経験を超えた視点に立つこと」なので、昔は「先験的」という訳語をあてられた。岩波文庫の「純粋理性批判」もそうなっているが、もっと定義があって今では「超越論的」と訳す。この哲学用語の背景にはアリストテレスの論理学があるし、より適切な訳になった。
カントをかじったベートーヴェンなら -TALの方を使っただろう。
指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ
いいなと思ったら応援しよう!
執筆活動へのサポートを賜ることができましたら幸いです!