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古民家レストランで彩り豊かな和食ランチ ほのかな残糖感じるアルザスのピノ・ブラン
古民家を改築したレストランをランチで訪問し、創意工夫に溢れる美味の和食をアルザスワインに合わせた。
メニューは以下の8品。あまり見慣れない「強肴」(しいざかな)は懐石料理の献立の一つで、強いてもう一品すすめる肴の意味とのこと。
8品のうち、魚介は九絵(クエ)、鰆(サワラ)、メヌケ、ズワイ蟹、秋鮭と5品に含まれる。ポークもあり、肉も魚も楽しめる充実のメニューだ。
先付け:無花果 大徳寺麩 青梗菜 真菰筍
お凌ぎ:九絵 バターナッツ南瓜
お造り:鰆
焼物:メヌケ 舞茸
煮物:里芋 ズワイ蟹
強肴:マンガリッツァ豚
食事:秋鮭 むかご
甘味:抹茶 栗
クエは漢字で九絵とされる由来は、体の縞模様が生きている間に九回変化する、体の模様が何枚かの絵に見えることによる。
サワラは魚へんに春と書き鰆だがその旬は春(関西)と冬(関東)と1年に2度訪れる。春に捕れる鰆はさっぱり、冬の鰆は産卵を控えているため、この時期だけ雑食になり、豊富な栄養を含むサンマやイワシを餌にするため、冬の鰆は脂ののりがよく、春に捕れるものよりもこってりとした濃厚な味わいが楽しめる。今回は冬の鰆なのでこってりタイプ、楽しみだ。
メヌケは水深200~1000mに生息する赤魚のような外観の魚で、釣り上げると水圧の変化により目が抜け出る(飛び出す)ことにその名が由来する。
合わせたワインはアルザスの生産者トリンバックのピノ・ブラン品種のもの。
トリンバック, ピノ・ブラン, アルザス フランス, 7,700円(レストラン価格)
Trimbach Pinot Blanc, Alsace, France
微かにグリーンがかったフレッシュな明るいイエロー。
香りには青リンゴ、リンゴ蜜などの親しみやすい果実香にほのかにヴェジェタルなタッチやフェンネルのハーバル、加えてライムの果皮のビターなニュアンス、白い花のフローラルなフレーバーも豊かに広がる。
風味にはのびやかな果実味で微かに残糖あり、酸味やや穏やか、チャーミングさを備えつつも果実味や糖が絶妙にコントロールされていて非常にバランスの良い余韻。
お凌ぎの“九絵 バターナッツ南瓜”に。
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見た目はオレンジの鮮やかな茶碗蒸しだ。ほぐされたクエの身には適度な歯ごたえが残っていて上品な旨味がふわりと広がる。柔らかい甘さを伴うカボチャがそこに寄り添い楽しいコンビネーションだ。
ワインのチャーミングな果実味はカボチャの甘味に継ぎ目なく繋がり、クエの上品な旨味をしっかりと引き立ててくれた。相性: ★★★☆☆
続いてお造りの鰆に。
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ほんのりと炙られてスモーキーなタッチを伴う鰆は、魚肉に柔らかくも心地よい弾力を感じる。脂ののりは良く、かつ風味が上品なバランスで箸がどんどん進む。
ワインのやや明るめの果実味はお造りに合わせるには難しいかなと思いつつ、恐る恐る鰆の余韻にワインを合わせるも杞憂に終わる。ワインの果実味は行き過ぎず、またライムのようなニュアンスを含んでいるので薬味のように寄り添う。お皿に添えられていた柴漬けを大根おろしに和えたものを添えて食べると、料理に甘辛と酸味が加わりワインとのつながりがさらに良くなった。
相性: ★★★☆☆
一品一品の量は程よく控えめで、心地よいリズムで次の皿が運ばれてくる。焼物は“メヌケ 舞茸”だ。
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メヌケはリッチな脂を含み、これがカリッと繊細にコントロールされた焦げ目によりこうばしさを増幅させている。さらに上に載ったチーズがクリーミーな触感でこうばしいメヌケの脂に絶妙に寄り添う。そして舞茸の香りも加わり様々な風味に口内が楽しく刺激される。この料理のリズムに、程よい残糖を伴うワインの少々おっとりとしたバランスが心地よく重なる。
相性: ★★★☆☆
煮物は“里芋 ズワイ蟹”。
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里芋の大地の香りを感じる素朴な風味を、餡かけのズワイ蟹カニの出汁とほぐれた身がコーティングし、山のリズムと海のリズムが楽しいコンビネーションを見せる。この素朴で新しいリズムに、ワインの残糖を伴う明るくおっとりとした音調が心地よく重なる。相性: ★★★★☆
さて料理はいよいよ終盤に。食事は“秋鮭 むかご”だ。お出汁を吸って炊きあがったご飯のうえに立派な鮭の身が乗ったお釜をスタッフの方がテーブルまで運んでくれた。プレゼンテーションの後、一旦お釜を下げてお茶碗に盛ってきてくれた。
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秋鮭のリッチな脂と、しっかりと効いた塩味、お米は昆布や魚の出汁を吸い込んでいて満腹中枢を破壊する。そこにむかごの素朴なホクホクとした食感と柔らかい苦味も心地よい。ワインのほのかな残糖は鮭の脂と塩気に心地よく寄り添う。相性: ★★★☆☆
締めのデザートは抹茶のムースに栗が入ったもの。
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創意工夫豊かで五感をたっぷり楽しませてくれたランチだった。魚介の出汁、旨味、そして餡かけや茶わん蒸し風の優しい甘みを感じる柔らかいバランスやリズムに、アルザスのピノ・ブランのピュアな果実味と穏やかな残糖が素晴らしい相性を見せてくれた。上質な和食の味付けにアルザスのピノ・ブランは安定感抜群の組み合わせだ。