珍味チャンジャ 噂のキムチに合うワイン
韓国料理の珍味チャンジャは、タラの内臓を唐辛子やニンニク、コチュジャンなどの調味料でキムチ漬けにしたものだ。焼肉屋で前菜に頼むくらいで、年に一、二度食べるかどうか、ましてやワインに合わせたことはなかった。
人気ワイン漫画“神の雫”でキムチに合うと紹介されて韓国でも人気が爆発したワインを先日、カルチジョリム(太刀魚のピリ辛煮)に合わせたところ素晴らしい相性だったので、同じく唐辛子の効いたチャンジャに合わせてみる。
イタリア半島のつま先部分に位置するカラブリア州を代表するワイナリーのリブランディ。前回カルチジョリムに合わせた地場品種ガリオッポと国際品種カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたグラヴネッロに加えて、同じ生産者のガリオッポ100%のドゥーカ・サンフェリーチェという銘柄を用意。実食の結果、カベルネをブレンドしたグラヴネッロの方がチャンジャの風味の芳香性、ボリュームとのシンクロ率が高かった。
さて、それぞれのワインの味わいと料理との相性の記録。
リブランディ, グラヴェッロ, ヴァル・ディ・ネート・ロッソ 2018, 14.5%, 3,614円
Librandi, Gravello, Val di Neto Ross
リブランディはティレニア海とイオニア海に挟まれたイタリア半島のつま先部分に位置するカラブリア州を代表するワイナリー。ワインに用いられるガリオッポ品種の語源はギリシャ語の「美しい足」に由来。古代ギリシャ、オリンピックの勝者に与えられたワインは、ガリオッポから造られていたという説もある。そのガリオッポに国際品種カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたワイン。
香りにはカシスやチェリーのリキュール、プラムジャムなどの完熟した力強い果実香。爽快なメントール香。鼻が乾くように感じるほのかに潮風のようなニュアンスや貝殻のフレーバーを含む力強いフレーバー。ブラックペッパー、ダークチョコレートに明瞭にバニラも絡む。
風味にはパワフルな果実味ながらやや落ち着きも帯び香りから想像されるほどの重々しさはない。一方、ミネラルや塩味を強く感じ舌に軽い乾きを覚える。パワフルな酸味、しっかりと存在感はあるがカベルネほど強くなくタンニンのバランスが素晴らしい、鼻腔をほのかに磯の香りが抜ける。余韻にはややビターなタッチが舌に残る。アルコールボリュームを感じる力強いボディ。
チャンジャの前にキムチに合わせてみたところ、キムチの酸味と旨味、コクにワインのパワフルな果実味とバランスが絶妙に。五つ星級の相性。噂は本当だった!
続いてチャンジャに。タラの胃袋のコリコリとした歯ごたえの後に広がる磯の香りと微かな旨味、そこに心地よい刺激を与える唐辛子に、ワインの力強い果実味と磯の香りが風味の方向性、ボリュームともにシンクロ。相性: ★★★★☆
リブランディ, ドゥーカ・サンフェリーチェ, チロ DOC, ロッソ リゼルヴァ, カラブリア, イタリア, 2,440円
Librandi, Duca Sanfelice, Ciro DOC, Riserva, Rosso Classico Superiore, Calabria, Italy, 2019, 14%
カラブリアを代表する土着品種ガリオッポ種から造られる。中世ナポリ王国のサンフェリーチェ公爵が所有していた畑で栽培される樹齢平均30~40年の古木のブドウを使用。
香りには完熟したブラックチェリー、チェリーリキュール、微かに黒胡椒のスパイスのヒント、ほんのりとビターチョコレートに加え茎のようなヴェジェタルなニュアンスや穏やかにハーバルなタッチも。おおらかで落ち着いた微かな樹木の香りも(樽は熟成には使われず、ブドウの樹齢による複雑さか来るものか)。
風味の果実味の凝縮感は思いのほか軽やかで甲高い、鼻腔をスパイシーなノートが強く抜ける、やや粗さのあるパワフルなタンニンがしっとりと舌に残る。明瞭でワインに輪郭を与える酸味、余韻にはビターなニュアンスやミネラルに富む。抑揚には若干欠けるか。
チャンジャの前にキムチに合わせてみるがワインがやや弱い。今回食べたようなコクの強いキムチにはカベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたグラヴェッロの方が断然合う。浅漬け系のさっぱりとしたキムチにはこちらのワインが合いそう。相性は三つ星。
続いてチャンジャに。キムチに合わせたときと同様、チャンジャに対してワインの風味ボリュームが軽すぎる印象。それでもチャンジャをコリコリと噛みしめていくとジンワリと広がる磯や土っぽい複雑で独特の香りをも包むワインの懐の広さは魅力。相性は三つ星と四つ星の間あたりか。相性: ★★★★☆
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