見出し画像

想像した時代の広告"銀座 資生堂ギャラリー あいだにあるもの"

現存する最古の画廊と言われる"資生堂ギャラリー"は、1919年にオープンした。
銀座の華やかな中央通り沿いに凛として佇む"東京銀座資生堂ビル"の中にあり、天井高さ5mを持つ途轍もなく贅沢なギャラリーだ。

ここで、夏の間に開催されていたのが、「あいだ に あるもの -1970年代の資生堂雑誌広告から-」だ。1970年代の資生堂のクリエイティブワークにフォーカスした展覧会で、当時を代表するブランド「シフォネット」「ナチュラルグロウ」や男性用化粧品「MG5」、「ブラバス」、香水「モア」などの雑誌広告約150点をグラフィックおよび映像で展示している。
会場構成やインスタレーションをアンビエントユニット「UNKNOWN ME」のメンバー大澤悠太氏などが手掛けることで、単に回顧だけでなく、現代においても当時のビジュアルや言葉ひとつひとつの芸術性に深く触れることができる。

会場の様子

1.空間に浮遊する創造的ビジュアル

クリエイティブワークの映像化
会場の様子
ブランド毎の広告

1970年代にはananやノンノなど若者のファッションやライフスタイルに影響を及ぼす雑誌が台頭し、数多くの美しいカラービジュアルが人々を魅了したという。
SNSやスマホで瞬間的情報を伝えなければ記憶に残らない現代の広告とは異なり、連続的に紙面に印象的な広告表現をすることでブランド構築をしていった時代。
ぱっと見では何の広告なのか予想できずビジュアルと言葉の間にある文脈を考えさせるものばかりだ。商品の世界観を抽象的に表現し、見る人の想像力をかきたてるこの時代の広告は「フィーリング広告」と呼ばたそうだ。
吹き抜けのギャラリー空間の壁面には大きく美しい広告ビジュアルが、背景のグラフィックデザインとヌルッと心の中に入ってくるアンビエントミュージックと共に展開されている。
またギャラリー内では150点ものクリエイティブワークが化粧品ブランド毎にライティングされたフレームの中で浮かびあがるように展示されている。

2.立ち止まって物語を考察する広告

シフォネット広告
シフォネット広告
MG5広告

ファッションやメイク、風景は70年代のレトロさを感じつつ、今見てもモードでかっいいものばかりだ。そして化粧品ブランドの広告でありながらその説明的要素は全くなく、画としての美しさを追求しドラマのワンシーンのようだ。
光沢感のあるサルエルパンツにブラックのシャツに細くて白いタイを結ぶカッコいい女性、その脇には「うーむ、レディ・・か」というコピー。えっ何々どういうこと?と問うてしまいくなる、あまりに短い言葉。コピーライターが多くを考え絞り出した考える余白を生み出した言葉選びがおもしろい。マニッシュなビジュアルの女性を前に想像を巡らせてしまう。

3.モダンで気品に満ちた銀座の顔

資生堂ビル外観
資生堂ビルアイレベル
ウィンドウディスプレイ

資生堂ギャラリーと共に資生堂ビルを語る上で欠かせないのが建物デザインだ。元は谷口吉郎の設計による建物があった。老朽化による建替が行われ、新たに建物高さを定めた銀座ルール適用第一号となった。
2001年に開館したこの建物はスペインのモダニズム建築家リカルドボフィルによるデザイン。歴史ある銀座にありながらモダニズムのレジェンドである彼のデザインの採用は資生堂らしい選択だと思う。所縁のある煉瓦色の外観には真鍮の目地が施され、開口部の切り取り方も整然としているし美しい。
最新の技術を駆使したファサード戦争のようになりつつある銀座の中央通りにあって圧勝なこの外観。
限りなくモダンで気品に満ちたデザインは資生堂のブランドイメージそのものだ。
そして今1階のお菓子売り場がとんでもなく多くの外国人観光客で賑わっているのも、資生堂の強さだ。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集