【workshop】 『ぼうけん図書館』出版記念展のための製本教室 | no.1 『エルマーのぼうけん』英語文庫版をドイツ装にしよう
— 製本ワークショップのご案内 —
2024年6月26日〜7月29日、東京・西調布の「TEGAMISHA BOOKSTORE」にて拙編著『ぼうけん図書館 エルマーとゆく100冊の冒険』の出版記念展が開催されます。店頭には、100冊+αの冒険物語がずらり! まるで小さな図書館みたいになりますよ。さらに、期間中『ぼうけん図書館』にちなんだ製本ワークショップを行います。ワークショップは3週連続の3本立て。というわけで、1本ずつ、詳細を紹介します。
no.1
『エルマーのぼうけん』英語文庫版をドイツ装にしよう
2024年7月15日(月・祝) 13:00〜16:30
item
1本目のワークショップは、文庫本の改装です。改装するのは『エルマーのぼうけん』英語版のペーパーバック。こんなのが講談社文庫からでていて、気軽に原語で読めるのです。巻末には英文読解のためのtipsも載っていて、とっても親切。これを「ドイツ装」に仕立て直します。
ドイツ装とは、表紙の背と平(ひら)に異なる素材を使った「継ぎ表紙」のこと。狭義では、表紙の芯材が背の素材の上に重なるものを指します。上製本(ハードカバー)でありながら、堅苦しくないラフさを備えているのがドイツ装の魅力。手紙社さんで月に一度開催している製本ワークショップ『週末でつくる紙文具』でも人気です。
specification
普段のワークショップでは手紙社さんのオリジナルペーパーを使っていますが、今回はちょっと趣向を変えて。ネパール生まれの手漉き紙「ロクタ紙」を使います。さまざまな色柄から、2色刷りのジグザグ模様を選びました。りゅうのボリスの背中のぎざぎざに見えなくもないような、あるいはボリスのしましま模様に見えなくもないような。
背は山羊革でくるみます(贅沢!)。ワークショップで革を使うのは、わたしとしてもはじめてです。ルリユール(工芸製本)では革をめぐる工程が多々あり、革剥き機でコバを薄くしたり、専用の包丁で剥いて厚みをコントロールしたり、水分を含ませてサイズを調整したり、とてもワークショプではやりきれない作業を伴うのですが……。今回はそうしたこまかいことは置いておいて、革という生きた素材を体験していただければと思います。
そして、これまたワークショップ初の試みとして、箔押しで題字を入れてみようと思います。使用するのは「メタリックデコペン」という伝熱ペン。型紙を用意しますのでそれをなぞってもいいし、ご自身の手書き文字でももちろんOK。箔のフィルムは、グロスの金とマットの金の2種があります。
material
ロクタ紙は、手漉きならではのおおらかな風合いが魅力。大胆な図案もまたハンドプリントによるもので、一枚ずつ表情が違います。これに合わせる山羊革は、深みのあるブラウン。ちなみに、しなやかな山羊革は製本に最適とされ、ルリユールにおいても基本的には山羊革を用います。
写真左の小さいほうが今回改装する英語版ペーパーバックで、いわゆる文庫本サイズです。写真右、おなじみの日本語版ハードカバーとはタイトルが違いますね。そうなんです、原題は「My Father's Dragon」なのです。「エルマーのぼうけん」という邦題は、エルマーの日本でのヒットに一役買っているような気がします。訳者の渡辺茂男さんの功績ですね。
さらに、装画も違います。ペーパーバックの装画は、シリーズ3冊目『エルマーと16ぴきのりゅう』のものですね。ここからはわたしの推測ですが、本国アメリカで出版されたペーパーバックにはシリーズ3冊分が収録されていて、3冊目の装画が表紙に使われた模様。これをローカライズした日本のペーパーバックはシリーズ1冊目しか収録していないのですが、表紙だけはそのままにしたのではないでしょうか(勝手に装画探偵)。
手のひらにすっぽり収まるサイズ感といい、ロクタ紙の素朴さといい、もしもエルマーが「冒険手帖」をもっていたらこんなかしら……と妄想は膨らむばかり。半ズボンのお尻のポケットか、はたまた背中のリュックにたくさんのみかんと一緒に突っ込んで、旅のおともにしてくれたらうれしいな。
● 詳細およびお申し込みは、手紙社さんのオフィシャルサイトにて。
* お申し込みは6月26日の18:00スタートです。