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【製本家のノート】 このnoteについて

はじめに

こんにちは、製本家です。「製本」ということばに馴染みのない方も多いことと思います。製本とは、紙を束ね、表紙をつけ、書物の形にすること。英語では「ブックバインディング」、フランス語では「ルリユール」といいます。

書店に並ぶ本の大半は機械で製本されていますが、ほんの数十年前までは、本は職人さんの手の技術によってつくられていました。製本の中でも人の手で本をつくることを「手製本」と呼び、また中世ヨーロッパから受け継がれる工芸的な製本を「(狭義の)ルリユール」と呼んだりもします。

20年ほど前にイギリスで手製本に出会ったわたしは、以来すっかり夢中になり、多少の倦怠期を挟みながらもぽつぽつと本をつくりつづけています。ありがたいことに製本にまつわる本をだしたり、製本ワークショップを開いたりもしています。ちなみに、本業はフリーランスの編集者で、つまり本の内か外かの違いはあるものの、本をつくってばっかの日々を送っています。

編集した本は世にでて光を浴びますが、製本した本は暗所に埋蔵するだけの習作も多く、せめてどこかに残しておきたいと考えました。というわけで、このnoteはわたしの製本の記録と製本のための思索の場です。つらつら綴るうちにいろんな記事が入り混じってきたので、サイトマップといえるほどきめこまかではありませんが、ここに整理しておきたいと思います。



製本作品を見てみたい方へ

● 製本習作アーカイブ
まず「手製本でつくった本って、どういうもの?」と思った方は、これまでにつくった習作を集めたこちらのマガジンをご覧ください。


手製本をもっと知りたい方へ

● 手製本のプロセス
手製本に興味が湧いたなら、一冊ができるまでの工程を綴ったこちらを。プロセス以外の余談、かなり多めです……。

● ルリユール(工芸製本)のプロセス
工芸製本「ルリユール」については、月に一度、数人の仲間とともに「ルリユール倶楽部」と称して修業中。失敗だらけの制作記録をつけています。


手製本をやってみたい方へ

● 製本ワークショップ
月に一度、手紙社の書店「TEGAMISHA BOOKSTORE」(東京・西調布)にて開催しているワークショップのご案内です。お気軽にご参加くださいませ。

● 拙著『製本家とつくる紙文具』について
製本の技術を使った紙文具づくりの本。2015年刊行の増補新装版では、文庫本の改装案も掲載。noteでは、制作裏話や材料リストを公開しています。


とにかく本が好きな方へ

● 製本家の本棚
各記事の最後に載せている「おすすめの一冊」のまとめリストです。自己紹介代わりのブックリストで、わたし自身の略歴もここに記しています。

● 名作を読む会
2025 年1月から、手紙社で「名作を読む会」という読書会をはじめました。毎月の課題図書の改装を、わたしなりの解釈とともに紹介しています。

● 本の展覧会
本にまつわる展覧会についての、製本好きによる製本好きのためのレビューです。会期ぎりぎりでの情報発信、悪しからず……。


おわりに

出版業界に翳りがさしてから、随分経ちます。そんな中、いまだに仕事も生活も紙の本まみれで過ごしていることを幸せに思います。そして、その記録を綴るメディアとして迷わずnoteを選んだ自分がちょっとおもしろいです。

いまや、スマホやPCなしでは仕事も暮らしも成り立ちません。でも、紙の本の行く末が危ぶまれるいまだからこそ、紙と人との結びつきの深さにハッとさせられることもあります。デジタルの利便に浸りながら、紙の普遍を信じている。文字という抽象を並べながら、本という具象に憧れている。こんな矛盾を抱えているのは、わたしだけでしょうか?

技術の速度に人の心が追いつかない時代にあって、わたしたちは無意識のうちに自分だけのよりしろを求めているのかもしれません。本が、ずっとわたしたちの友達でいてくれますように……などという妄想にふけりながら、今日も本をつくっています。


編集者、ときどき製本家
永岡 綾


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