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○読書感想○「宮本武蔵 謎多き生涯を解く」(0009)

今回のテーマは宮本武蔵。武蔵の出自や生涯を実証的なアプローチで紐解く一冊です。

「宮本武蔵 謎多き生涯を解く」 
出版社: 平凡社(平凡社新書)
著 者: 渡邊大門
発行年: 2015年(初版)
価 格: 836円(税込)
URL  : https://www.heibonsha.co.jp/book/b194006.html

 

※一部、本書本旨に触れている部分があるかもしれません。ご容赦ください

<概要>
宮本武蔵(Wikipedia)に関する歴史的資料をベースに実証的に宮本武蔵の生涯とその実像に迫る内容となっています。 
小説や映画等の世界で脚色されてきた宮本武蔵の一般的なイメージを排し、できる限り信頼性のある証跡を用いて、確かであろう宮本武蔵の姿を描こうと試みています。 
とくに宮本武蔵の出自、生誕地や彼の父親の論説に力が入れられています。

 

<構成>
全5章に分かれています。
第1章は宮本武蔵の父親である無二斎(Wikipedia)について、第2章は宮本武蔵の生誕地について、第3章は宮本武蔵の出自について、第4章は宮本武蔵の前半生について、第5章は後半生について述べられています。
とくに、宮本武蔵の出自にまつわる第1章から第3章に本書の過半が割かれています。

 

<ポイント>
本書の特徴は、現代に残された宮本武蔵に関する証跡を論拠に、実証的に武蔵の姿を明らかにしようとしている点であると思われます。 とくに、宮本武蔵の出自に関する点に本書の主要論点だと思われます。 

前半では、これまでの宮本武蔵像では存在感の希薄な父親である無二斎の実像、血統としての赤松氏出自説や美作・播磨の生誕地論が手厚く考証されています。

一方、後半では、宮本武蔵の実人生について、よく知られている決闘に関するエピソードなどが論じられています。 しかし著者も指摘の通り一次史料が非常に少ないため、これまでの研究成果と大きな違いはないように思われました。 前半と同様に広く証跡に基づく検証があればと感じました。 ただ、新発見の史料があったわけではないので致し方ないかと思われます。

また兵法家としての宮本武蔵だけでなく、それ以外の芸術面の事績にも触れられています。

 

<著者紹介>
渡邊大門 
歴史学者。佛教大学大学院博士後期課程修了。株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。 
主な著作/
『牢人たちの戦国時代』 (平凡社新書)
『秀吉の出自と出世伝説』(洋泉社歴史新書y) (国会図書館) 
『清須会議 秀吉天下取りのスイッチはいつ入ったのか?』 (朝日新書)
など。
Twitter/
https://twitter.com/info_history1?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 

<私的な雑感>
著者は、各種資料を多用し多方面のこれまでの研究を検証しつつ、確かであろう宮本武蔵の実像に迫ろうと、丁寧かつ慎重に論証を進めています。 ドラマチックな論説の展開や想像力豊かな新たな宮本武蔵像の主張があるわけではありません。 その点、小説や漫画等の宮本武蔵ファンは期待すると肩すかしであり、大袈裟に言えば退屈かもしれません。 もちろん、お通さんや又八のことはいっさい登場しません。

本書は新書であり紙幅に制約があるので、やむを得ないかと思われますが、宮本武蔵が残した芸術作品などをより子細に論じると、より新しい宮本武蔵の実像に迫ることができるのではと感じました。 しかしそれは本書の趣旨とは少々筋が異なるので、別の研究で確かめることがよいのかもしれません。

エンタテインメントの宮本武蔵から一歩進んで深くその実像を知りたいという方には最適なのではないでしょうか。 主観的・恣意的な想像を差し挟まないように努めている著者に、歴史に対する真摯な姿勢を感じました。

たいへん勉強になりました!!

 

<参考リンク>
・書籍「五輪書」  (筑摩書房)
・書籍「宮本武蔵 「兵法の道」を生きる」  (岩波書店)
・書籍「芸術家 宮本武蔵」  (人文書院)
・国会図書館デジタルアーカイブ「二天記」 (肥後文献叢書・第二巻)
・島田美術館(熊本県)  (※公式サイト)
・剣豪・宮本武蔵:その実像と『五輪書』に見る兵法思想 (nippon.com)
・シリーズ 熊本偉人伝 Vol.1 宮本武蔵 宮本武蔵と熊本。文武をたどる(季刊 旅ムック.com熊本)
・青空文庫「宮本武蔵」(著:吉川英治)  (青空文庫)

敬称略
情報は2021年4月時点のものです。
内容は2015年4月15日初版第1刷に基づいています。

 

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(2021/05/13 上町嵩広)

 

<バックナンバー>
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