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★読書感想Vol.5★ (2020/08/09)
5.「織田信忠」 (中公新書)
著 者: 和田裕弘 ※敬称略
出版社: 中央公論新社
発行年: 2019年8月25日
価 格: 860円(税別)
本書:出版社Webサイト
※恐縮ですが、書籍のサブタイトルは割愛させていただきました。
※一部、本旨に触れている部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
<概要>
織田信長の嫡男である「織田信忠」の事績や人柄を通じたその生涯がメインテーマになっています。
第1に、信忠の血縁関係や姻戚関係から、彼の織田一門における地位や一門衆との関係性を。
第2に、信忠の元服・初陣から織田家の家督相続までの流れを。
第3に、信長から移行しつつあった織田政権の総大将としての地位確立までを。
第4に、ほぼ全日本を掌握しつつあり、いわゆる「天下人」(※信長を「天下人」とする是非は保留します)としての信長の後継者として自他共に認知されるまでの状況を。
第5に、「本能寺の変」における信忠の自害までを。
それぞれ書き分けた構成になっていると思われます。
著者は、信忠に関する史料(存命時の文書や日記等、死去後の軍記物を含め)が非常に少ないことを指摘しており、信忠の本質に迫る難しい面があるものの、残った史料を基に信忠の事績等について丁寧に記述し、織田信忠を網羅的に解説しているかと思われます。
戦後昭和における織田信長像から平成におけるその見直しにより、織田信長に関する書籍は非常に多く、飽和状態の感もありますが、その中で、信長の陰に隠れてしまった織田信忠を扱った貴重な書籍であると思われます。
<雑感>
以前は、織田信忠について、「凡将」のようなイメージが多かったと思われますが、著者が指摘するとおり、織田信忠は「信長の後継者として十分な才がある武将」として当時、認知されていたと思われます。
信忠は、本能寺の変にあたり、光秀の奇襲に逃げ切れないと判断し、二条城に籠城したものの、結局は自害します。結果論になりますが、信長の弟の織田長益が生き延びたように、逃亡することは可能であったと思われます。信忠が生き残った場合、著者も指摘するとおり、近在の弟達の戦力等を集めて光秀を討伐し、織田政権を継続することは十分可能であったと思われ、そのたった一つの判断の差が大きく歴史を変えて、以後の歴史の主役となる豊臣秀吉と徳川家康の活躍に隠れて、事後において正当な評価を受けることができなかったのではないかと感じました。
購入して良かったと思いました。
※内容は、「2019年8月25日 発行」版に基づいています。
<関連書籍> ※敬称略 リンク先は出版社Webサイトです。
*「現代語訳 信長公記」 著:太田牛一/翻訳:中川太古 中経出版(KADOKAWA)
*「織田信長の家臣団―派閥と人間関係」 著:和田裕弘 中央公論新社
*「織田信長 <天下人>の実像」 著:金子拓 講談社
(2020/08/09 reki4)