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ころっぷ
2024年1月31日 20:27
1 ちびた鉛筆を最後まで使う為のキャップを、私はその時初めて見た。シルバーの金具に小指の先位になった鉛筆が差し込まれている。斜めに傾げたちゃぶ台の上、インスタントコーヒーの空き瓶の中にそれが無造作に3本突っ込まれていた。初めて寺岡泡人(ほうじん)のアパートに行った時、暖房器具の一切無い冷え切った部屋で私は、その寂しげに光るシルバーのキャップをずっと見詰めていた。