▽NEWS▽近藤銀河氏の『フェミニスト、ゲームやってる』が5月24日に発売開始。『The Last of Us Part II』などの大作から、『アンパッキング』などインディーゲームシーンのタイトルを、過去にない論点で批評する一冊
近藤銀河さんのゲーム評論集『フェミニスト、ゲームやってる』が5月24日、晶文社から刊行されます。本書は先日、惜しまれながら閉鎖されたWebマガジン「wezzy」にて、ゲームに伏流するフェミニズム性やクィアネスをすくい上げてきた連載が書籍としてまとまったもの。
執筆 / 鳥の王国
編集・記事タイトル / 葛西祝
本書は『The Last of Us Part II』や『アサシン クリード オデッセイ』などのAAAの話題となった大作のほか、『アンパッキング』のようなインディーゲームまで様々なタイトルをフェミニスト的視点から扱っています。また本書では私が翻訳した『ペイトンの術後訪問記』も取り上げられています。そのことにより、新たなコミュニティの可能性も感じさせる希有な一冊となっています。
著者の近藤銀河さんは「フェミニストでクィアでアーティストでライター」です。ともすれば既存のゲームコミュニティには馴染まないと見なされがちな立場ですが、著者はむしろ、そういったあり方がゲームとさまざまな形で結びついてきたということをゲーム評を通じて描き出していきます。そして、この「一見バラバラに見える私の中にある複数の属性」(「はじめに」)とゲームとのつながりを語ることで、ゲーム文化のフェミニストでクィアな側面が浮かび上がってきます。
さらに、近藤さんは「ME/CFS患者の車椅子ユーザー」でもあります。本書はフェミニズムの視点に加え、障害者の観点からビデオゲームにおけるオープンワールドの都市論までも言及しているテキストが書かれている点が、そこでつながるのは著者と個々のゲームだけではありません。著者が自らのさまざまな属性をゲームと関連付けて語るとき、それは同じ属性や関心を分かち合う人々に対する「あなたもゲームコミュニティに参加できる」というメッセージにもなります。いままで見過ごされてきた側面をゲームから拾い上げることで、既存のコミュニティから疎外され孤立していたプレイヤーたちもつながり得るという可能性が提示されるのです(すてきな装画もそのビジョンを伝えてくれています)。
ゲームはもっと多くの人を包摂できるはずの文化でしたし、そういった側面はいまでも確実に存在します。本書はゲームコミュニティのあり得たはずの未来を現実にしようとする勇気ある一歩であり、新たなコミュニティの礎にもなり得る豊かな作品です。
『フェミニスト、ゲームやってる』は現在、Amazonなどで予約を開始しています。
POINT これから読む人へ
・本書の刊行は5月24日だが、ネット書店や町の本屋さんなどで予約ができる。
・予約の際は著者名や出版社名に加えてISBN(978から始まる13桁の数字)を把握しておくと便利。
・様々な事情で本を自分で購入するのが難しい場合、図書館に購入依頼を出すこともできる。居住する地域だけでなく、通勤・通学先周辺にある図書館も利用可能な場合があるので調べてみよう。
・本書では『ゴーンホーム Gone Home』に関連してZINE文化が紹介されている。著者も参加する『クィアフェムによる恋愛ZINE』が5月19日に文学フリマ東京で頒布されるそうなので、興味がある人はチェックしてみよう。イベント後に書店への委託販売も行う予定とされている。