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見上げないと読めない「本」

ーー本は、その特性上、見上げて楽しむことが難しいんですよね。俯いて読むのが本だから。でも、エンタメ性を追求するのなら、見上げて楽しめるような設計をつくらないといけない。より多くの人の心を動かすのなら、本を見上げて楽しむ仕掛けをつくるべきなんです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「本を届けるために『体験』をどう設計するか」というテーマで話していこうと思います。




📚古本屋の企画「awai」

今僕は常磐線に揺られながらこの記事を書いています。茨城の勝田駅から、東京の日暮里駅へゆらゆらと。僕がどうして勝田駅にいたかというと、街を灯す古本と植物とアンティークの店「Cohako」に立ち寄っていたためでした。

勝田駅徒歩0分のところにあるお店で、古本や小物が売られていたり、併設するカフェでお茶をすることができたりします。また、定期的に読書会を開催しておりまして、僕も今までに2回お伺いしました。



実はそのCohakoで、今日までの企画が開催されていたんです。何かと何かをつなぐあわいという概念があります。その「間」をテーマにした企画展が開かれていて、古本屋のスペースでは、「ひとすくいの言葉」という企画をされていました。天井から紐で本を吊り下げるというもので、その本はどれも、使われなくなった古いノートを再利用してつくられています。そして、そのなかには、文学作品や絵本のフレーズが記されていました。



SNSでこの企画を知ったときから、本を題材にした企画ということでずっと気になっていたし、ちょうどタイミングが合って訪れた今日実際に見てみたら少しホラーを感じさせるアンティークな空間が広がっていて、心が動きました。

吊るされている本に書かれているフレーズの引用元の作品は、店の中央に並べられていて、すぐに手の取れるようになっています。吊るされた本のフレーズを通して、お客さんと本をつなげることを狙っているんですよね。まさに「間」。新しいつながりを生むステキな空間でした。

店内の様子は是非以下の写真から想像してもらいたいのですが、当然のことながら、吊るされている本を読もうと思ったら、見上げないといけないんです。


📚見上げないと読めない本

言うまでもありませんが、本を読むとき少なからず俯きますよね。首を下方に傾けて、視線を落として、文字を追っていくわけですから。

しかし、Cohakoの展示では本が吊るされているので、見上げないと読めないんです。目線に近い位置にある本もあるけれど、天井に近い位置にある本もある。後者はちゃんと見上げて目を凝らさないと読めないんですよね。

個人的にはこの仕掛けが面白いなあと思っていて、可能性を秘めているんじゃないかなとも思いました。



本が人の心を動かすことが目的だとしたら、本もひとつのエンタメだといえます。本を書くにしても、本を読むにしても、本を届けるにしても、本のイベントに参加するにしても、あるいは自分で企画するにしても、僕は「面白い」を求めてしまうんですよね。

それは「Funny」だけではなくて「Interesting」の意味も含んでいて、本というコンテンツにどう「面白い」を組み込めるかが、僕が追求していきたい課題だったりします。「えもい」でも「泣ける」でも「笑える」でも「元気が出た」でも何でもいい。本を通して、人の心を動かすことができたらいいなと常々考えているんです。

世の中のエンタメを見渡すと、見上げて楽しむコンテンツばかりだと気付かされます。花火も、パレードも、プラネタリウムも全部見上げるんですよね。映画や舞台、コンサートも、席によっては上から見下ろして楽しむことは普通だけれど、でもいちばん心を動かされるのは見上げているときですよね。最前列とかアリーナの価値が高いのは見上げられるからだといえます。

ただ、本は、その特性上、見上げて楽しむことが難しいんですよね。俯いて読むのが本だから。でも、エンタメ性を追求するのなら、見上げて楽しめるような設計をつくらないといけない。より多くの人の心を動かすのなら、本を見上げて楽しむ仕掛けをつくるべきなんです。

そういう意味では、今回のCohakoの企画では見上げて読むしかけが施されていたし、本を届けるために導線がしっかりしていたから、エンタメ性が高いといえます。今度自分で本のイベントや企画をやるときの参考にしようと思いました。


📚本を届けるための設計

今回は「見上げる」という体験に着目して話していきましたが、本が売れない出版不況の今、本を届けるための設計をないがしろにしてはいけないと考えていて、僕はまだプロではないけれど、本を書くだけではなくて本を届けることにも向き合っています。

去年出版した初書籍『Message』を手売りで届けると決めたのも、ある種体験を楽しんでもらうことにねらいがありました。おつりや小銭がなくて買えない、売れないというリスクを潰すために、価格は1000円に設定して、とにかく手売りという体験に価値を感じてもらうことに努めました。ふたを開けてみたら、案の定、というより、想像以上にそこに価値を見出してくれる人がいて、現時点で248冊手売りすることができました。

その後も、展示会をやってみたり、トークライブをやってみたり、文学フリマに出店してみたりしてきました。もちろん結果が出たものもあれば、芳しくない結果に終わるものもありました。



今、僕が熱を入れているのは、ビブリオバトルです。5分間で本を紹介するプレゼンバトルのことで、大学大会、地区大会で優勝できた僕は、来月開催される全国大会に出場してきます。僕にとって3度目の全国大会なんですが、3度目の正直を果たすために、全国制覇を狙って準備を進めているというのが現状です。

ビブリオバトル公式戦の審査方法はお客さんによる投票です。いちばん読みたくなった本はどれか?という個人の感情に紐づいた審査基準なのです。発表者は聴き手に「読みたい!」と思わせるような発表をしなえればいけないわけで、それは聴き手の心を動かす必要があると言い換えられます。

つまり、ビブリオバトルはエンタメなんです。

「全国制覇の夢を叶えたい」「本を届けるスキルを身に付けたい」……ビブリオバトルに挑戦している目的はいくつかありますが、そのうちのひとつに「本のエンタメを追求したい」もあります。本の面白さを、面白く伝えたい。そんな情熱を胸に、ビブリオバトルに向かいっているんです。



明日は朝から母校の中学校に行ってきます。今、常磐線に揺られているわけはそのためです。

というのも、母校の中学校の1年生がビブリオバトルをやるそうなんです。3,4時間目の時間、体育館を使って本格的に。そんな情報を知ってしまったものだから、行かないわけにはいきません。昼から水戸でバイトだから途中で帰らないとだけど、ちょっとだけ僕が160人を前に挨拶することができるとのことなので、ビブリオバトルの魅力を、本の面白さを伝えられたら本望です。

最近は語りたいことが多すぎて毎日3000字くらい書いています。今日もほらもうすぐ3000字。もうすぐ牛久に着きます。そういえば、牛久大仏を初めて見上げたときは心震えたなあ。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20231117 横山黎



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