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名前のついた関係は息苦しい。
――名前とは大多数の人が認知するためのツールであって、関係を構築するふたりのために必ずしも必要なものではありません。名前がつくことで息苦しいと感じるのならば、名前なんか付けない方が良い。僕はそう考えるのです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「名前のついた関係は息苦しい。」というテーマで話していこうと思います。
📚水
5月21日(日)に開催される文学フリマ東京36に、僕は出品者として参加します。最新作『夜明けのうた』といううた集を販売する予定です。
詩のような、歌詞のような、うた。中学時代から400以上の作品を綴ってきた僕が、20作品を厳選して1冊の本に仕上げました。1日の終わりに1作品をじっくり味わう読み方がおすすめです。眠る前のあなたに小さな革命を起こしたい。ステキな夜明けを迎えてほしい。そんな願いが込められています。
Amazonで購入できますが、文学フリマ価格で少しお安くご案内します。是非、【N-38】のブースにお越しください!
文学フリマまで少し時間があるので、うた集に収録してる作品たちを毎日紹介していこうかなと思います。そのうたにまつわるエピソードを物語っていきますね。
今回取り上げるのは、「水」という作品です。
水のような流動的な関係を築き上げる意味を綴ったうたで、僕の恋愛経験がベースになっています(笑)
📚息苦しくて生きづらいだけ
もう3年も前になりますか、大学1年のときにお付き合いしていた彼女に交際を持ち掛けたときのことを思い出します。
2020年といえばコロナが猛威をふるっていた頃。入学式はなくなるし、授業は全部オンラインという不遇の時代の大学生でした。そんななかでもオンライン交流会を企画して、どうにかつながろうとしていたのが僕らの世代です。
かくいう僕も、学科のオンライン交流会に参加して、先の彼女と仲良くなってお付き合いするにいたったTHEコロナ禍の大学生でした。
彼女とのLINEでの会話のなかで、とあるきっかけから、「名前のない関係」というフレーズが出てきました。それを受け、彼女の方からこんなことを打ち出してきたんです。
「私たちってどんな関係なんだろう?」
その頃には彼女に夢中だった僕は、ここだ、と思い、勝負の一手を打ちました。
「名前、つけたい?」
そう訊いたんです。そしたら、
「んー、れいくんは?」
質問で質問を返すあざとい返事をされたわけですが、これはもはやあとは僕が押すだけだと思い、詰みの一手を送信しました。
「今度会ったとき、名前をつけよっか」
その数日後、僕らは水族館に行って、名前をつけて、お付き合いすることになりました。単純に楽しかったですが、諸事情あって、お別れ。弾けるように始まった炭酸水のような恋は、泡となり消えてしまいました。
ただ、炭酸の抜けた関係はやがて水のようなそれになりました。
📚水のように流動的に
名前のない関係。
そんなフレーズをよく耳にする昨今ですが、みなさんはどのような考えをお持ちでしょうか。個人的にはそういうものに好意的で、というより、僕が好んでそういう関係を結ぼうとします。
ただのクラスメイトなのか、友達なのか、恋人なのか、パートナーなのか、相談相手なのか……。たった一言では言い表せない関係というものは確かにあるわけですが、僕らは妥協するようにこの世にありふれた名前をつけます。
しかし、僕はこの世に全く同じ関係なんて存在しないと考えます。
この世にひとりとして自分と同じ人間はいないわけですから、自分と他人とが結ぶ関係さえもこの世にひとつとして同じものはないわけです。それでも理屈をつけたい、秩序を生みたい僕らは名前をつける。
関係が先にあって、その後に名前が生まれるんだから、そもそも名前のない関係というものが奇異に見られることにも違和感があります。関係とは本来水のように流動的なものであって、当事者たちが満足していればそれで成立しているわけであって、他人がとやかくいう筋合いのないものです。
そこにわざわざ名前をつけようとするから軋轢や不和が生まれる。
名前とは大多数の人が認知するためのツールであって、関係を構築するふたりのために必ずしも必要なものではありません。名前がつくことで息苦しいと感じるのならば、名前なんか付けない方が良い。僕はそう考えるのです。
水のように流動的に。
そんな意識を持つことで、関係も、人生も、もう少し自由に捉え直すことができるのではないでしょうか。
僕の元カノの話に戻りますが、別れてからも彼女とは良好な関係を築いていて、今でも仲良しです。
この前は、今カレの愚痴とノロケを聞かされました。また、彼女の人生相談にも乗ったし、彼女との日々をベースにした物語を一緒につくろうという約束もしました。
こんな関係に、どんな名前をつければいいのか、僕には分かりません。ただ友達と呼べばそれで済む話ですが、それでは不十分に感じるほど、ふたりの物語が深い。かといって、適当な名前はそこらに転がっていない。
ですから、いつかふさわしい名前を見つけられたらいいな、それくらいの軽い気持ちでいることにしているんです。
名前をつけて息苦しい関係は、名前をつけずに付き合っていく方がいいよねという話でした。名前をつけないから、流動的に変化することができるのもメリットだと思います。お互いに大切なものを守りながら、変わり続ける関係。僕はそういうふたりに憧れます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20230518 横山黎