クレームによって理学療法士として成長できた理由
理学療法士をしていると、クレームや苦情を受けることは一度や二度ではないと思います。
病院に勤務していてもありますし、訪問リハや訪問看護だと更に多くなるように思います。クレームを受けると、けっこう落ち込んだり凹んだりしますよね。
いわゆる『モンスターペイシェント』は別として、クレームや苦情というのはまっとうな意見が多く、クレームへの対応の仕方がその後の自分の成長を左右すると言っても過言ではありません。
今回はクレームを受けたときにどんなことを考え、どう対応すべきなのかを考えてみたいと思います。
この記事を読むと、
●クレームを受けることが恐くなくなる
●クレームへの対応が上手くなる
●クレームを自分の成長の糧にできるようになる
クレームを伝えてくれる人は何を求めている?
上でも書いたように、いわゆる『モンスターペイシェント』と呼ばれるような方はちょっと特殊なので、今回は考えません。そのような人たちは、クレームを言うことが目的だったり、クレームを言うことによる何らかの利益を期待するからです。
そうではなく、全うなクレームというのは、改善を求める声と考えることができると思います。
クレームを言うということは、なかなかエネルギーを消費することです。
病院や事業所の担当者に連絡して、何があったのかを伝える。結構めんどうくさいと思いませんか?
正直、訪問リハや訪問看護であれば、そこの事業所や担当者に不満があれば、適当な理由をつけて事業所を変えてしまった方が楽だったりします。事業所を探すのはケアマネがやってくれますし。
相手との関係性を考えながらクレームを言うというのは、なかなかストレスのかかることです。
まっとうなクレームを言ってくれる人というのは、根本的にはその事業所からのサービスを受け続けたいという思いがあるからこそ言ってくれるのです。
つまり、クレームの内容、不満や不安を感じたことが改善されれば、そちらの事業所を利用し続けたいですよ、という意思表示なのです。
医療者は自分のペースで仕事を進めたい?
病院の場合は不満があっても転院するというのはなかなか大変なので、クレームを言ってくる人は少数だと思います。
訪問リハや訪問看護では、病院に比べてクレームが発生しやすいです。
それには大きく二つの理由があると考えます。
一つは、自宅という場所でサービスを受けるため、利用者の生活空間に我々理学療法士等がお邪魔する、という構図になるからです。
もう一つは、病院では医療を受ける患者という役割である一方、自宅では生活者という役割がその中心となるからです。
病院に入院していると、患者という役割を果たすことを求められます。
基本的には医療者のペースで毎日の入院生活が進行していきます。
食事の時間も決まっていて、理学療法等の時間も自分で指定することが(基本的には)できません。
理学療法場面でも、理学療法士から「家に帰るために頑張りましょう」みたいな目標設定がされがちですし、理学療法の内容も理学療法士が主体的に決められがちかと思います。
入院中はそこに疑問を持つ患者さんはあまり多くないと思います。
おそらく「医療は受けるもの」という受け身の意識があるからだと思います。
では、訪問リハや訪問看護といった自宅で受けるサービスの場合はどうでしょうか。
基本的に、利用者さんは生活者です。
自宅での主体的な生活を営む中で、一部の時間をサービスを受けるのに使います。
しかもサービスを受ける空間というのは、自宅つまり自分の空間です。
自分自身が主体となった理学療法等を受けるのは当然だと考えますよね。
そんな中で理学療法士が理学療法士主体の理学療法を提供したとしたらどうでしょう?
本人との認識のズレ、本人の希望とのズレがあった場合、当然クレームが発生するわけです。
クレームは理学療法士が成長するチャンス
クレームは発生する理由の多くは、利用者さんと理学療法士との認識のズレだと考えます。
もっと直接的に言うと、理学療法士が自分のペースで仕事を進めようとした結果です。
つまり、理学療法士が利用者さんのニーズを把握できていなかった、利用者さんの考え方や性格を把握しきれていなかった、ということです。
いくつか例を挙げましょう。
病院では、患者さんのベッドの上に理学療法士が上がるのは当たり前に行われます。それは病院の備品だからです。
しかし、自宅ではあくまで利用者さんのベッドです。無断で上がると嫌がられるのは当然ではないですか?
利用者さんは全身的な持久力の向上を期待して依頼したのに、訪問した理学療法士が麻痺の改善ばかり考えていたらどうでしょう?「何のために呼んだかわかってるのか!」となりませんか?
全てではないかもしれませんが、多くのクレームは理学療法士が相手のニーズを把握していないことによって生じます。
理学療法士が相手の求めていることを把握せずに理学療法を提供する。これって、何か意味があることですか?
理学療法士が自分のやりたいことやっていては、それは理学療法士のための理学療法です。
患者さん・利用者さんの求めている理学療法、解決したい課題などを中心に据えながら、その中に理学療法士としてやりたいこと・やるべきと考えることを織り交ぜていく。
こんな考え方ができると、理学療法士としての成長が加速すると考えています。
私自身も、病院から訪問看護に転職した際、なかなかのクレームをいただきました。
しかし、その経験があったからこそ、利用者さんを主体とした理学療法・リハビリテーションを考えることができていると思います。
そして、今ではクレームを受けることはほとんどありません。
クレームは、理学療法士として成長するための糧にできるものだと思うのです。
まとめ
今回はクレームについて考えてみました。
クレームを受けるのは、やっぱり嫌ですよね。
しかし、受け手しまったものは仕方がありません。
クレームを受けてしまった原因を考え、真摯に対応する。
自分がやっていたことを反省し、相手のニーズを把握する努力をする。
そうすれば、クレームは自分自身を成長させる糧にすることができます。
このことに気付けると、理学療法士としての技術すらも向上すると考えます。
ぜひ、クレームを受けてしまったときには、ただ落ち込むのではなく、それを自分自身の成長に活かしてください。