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いくら言ってもできない子、少し視点を変えるだけで急に成長します

育児でも理学療法(リハビリテーション)でもそうなのですが、こちらが何度繰り返し教えてもできなかったり、伝わらないことって多いですよね。

そんなとき、同じ言い方・同じ教え方で繰り返しても、なかなか思うような結果には結びつきません。

では、どうすれば良いのでしょうか。

結論は、相手に合わせた難易度設定が必要ということです。

今回は、子育てにフォーカスして説明していきたいと思います。

この記事を読むと、
●子どもに合わせた難易度設定の必要性がわかる
●子どもに教えたいことを教えるための最短距離を考えられるようになる
●子育てにおけるストレスが軽減できる


最近接領域という考え方

ヴィゴツキーという心理学者をご存知でしょうか。

ヴィゴツキーは『最近接領域』という概念を提唱し、教育は子どもの発達しつつある水準=予測的発達水準に基づいて行われるべきである、と言いました。

これはつまり、現在の子どもの発達水準に合わせた教育を行うのではなく、次に獲得できると予測される水準に基づいた教育を行うべきであるという考え方です。

この次に獲得できると予測される水準(領域)のことを『最近接領域』と言っているのです。

極端な例ですが、首の据わっていない赤ちゃんに歩くことを教えようとしても難しいですよね。

首が据わって、座ることができて、つかまり立ちができて、伝い歩きができて、手放しで歩ける。

発達過程にはこのような順序性があって、この順序を飛び越えて発達するということは基本的にないと思います。

運動面は目に見えるのでわかりやすいですが、認知面・心理面はちょっとわかりづらいかもしれません。

例えば、母親との愛着関係が形成できていなければ、自分の行動の善悪を母親の表情から判断する、ということはできないでしょう。

自分と相手の違いというものを理解できていない状態では、相手の気持ちを推し量るということもできないでしょう。

このように、運動面でも認知面・心理面でも最近接領域というものが存在し、次に獲得できる発達水準というものがあるのです。


教えることを一旦あきらめる

このように、子どもの発達には、次に到達できる水準というものがあります。

ということは、次に獲得できる能力を予測して教えていかなければなりません。

逆に言うと、大人の都合で「これをわかって欲しい!」と思って教えても、それが最近接領域になければ、子どもは理解できないということです。

これがわかると、親のストレスは激減すると思います。

なぜなら、「あ、これはまだ早かったか。先にこっちを教えたら理解できるかな」と、迂回して進むことができるからです。

子どもの最近接領域にないものをゴリ押しで教えようとしてしまうと、「なんでわかってくれないの!キーーーッ!!!」となってしまいますよね。

それは親にとっても子どもにとっても不幸なことです。

大人の教えたいことが子どもに理解できない場合は一旦あきらめて、それを理解するために必要なものを先に教えてあげる、という方がスムーズに進むことができるのではないでしょうか。

急がば回れというやつですね。


「勉強しなさい」も伝わるはずがない?

ちょっと話が変わるのですが、子どもの頃に「勉強しなさい」と言われた記憶はありますか?言われて、「よっしゃ、勉強するぞ!」と思えた記憶はありますか?

同じことを自分の子どもにも言ってしまっていませんか?

「勉強しなさい」と言われてやる気が出るという子どもは稀だと思います。

これも最近接領域から考えると、当たり前かなと思います。

私自身がそうなのですが、子どもの頃は何のために勉強するのかもよくわからず、やらなければならないからやる、という状態でした。

それが大人になった今、仕事の関係もありますが、非常に広い範囲の勉強を好き好んでやっています。

これを読んでくださっているあなたも、似たような経験をしているのではないでしょうか。

これを最近接領域の考え方に当てはめると、当時は勉強の必要性もわからず、勉強をした結果としなかった結果を予測することもできず、その場の感情で「やりたくない」と思っていたのではないでしょうか。

今は、勉強した内容を仕事や自分自身の行動に結びつけ、活かすことができると思えるから、進んで勉強ができるのだと思います。

それは勉強したことで得られた成功体験があり、嫌なこと・めんどうなことの先に自分の得になることがあると予測できるからではないでしょうか。

そう考えていくと、「勉強しなさい」と言っても勉強できない子どもに対して同じことを繰り返し言っても意味がないことがわかります。

それよりは、遊びの中で成功体験を積み、壁にぶつかったときに何らかの知識が有効だという経験を補助する。

学校で勉強したこと、親から教えられたことが、遊びや生活の中で活きたという経験をさせてあげる。

そういった経験を蓄積していくことで、勉強することの意味が掴めたとき、「勉強しなさい」などと言わなくても勉強するようになるのではないかと思います。

東大に行くような賢い人の多くは、親から「勉強しなさい」と言われたことがない、というような話を聞くことがあります。

もしかすると、こういう理屈を実践できているというのがあるのかもしれませんね。


まとめ

今回は子どもの発達や教育における『最近接領域』という概念を紹介しました。

子どもの発達水準、次に発達できると予測される水準に合わせて教育を行うべきという概念です。

大人の都合を押し付けても、子どもは嫌になるだけです。

一見遠回りに見えても、教えたいことを直接的に教えるのではなく、その水準に到達するために何が必要なのかを考えた方が、結果的に早いのかもしれませんね。

実践するのは難しいかもしれませんが、子どもに大人の都合を押し付けず、自分自身もストレスを溜めない子育てをしたいですね。

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まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
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